世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】伊藤羊一「やりたいことなんて、なくていい。」

今年16冊目読了。ヤフーのコーポレートエバンジェリストにしてYahoo!アカデミア学長の筆者が、将来の不安と焦りがなくなるキャリア講義を展開する一冊。


筆者に会っているから贔屓目になってしまうが、それを抜きにしても本当に面白い。これ、若いころに読んでおきたかった本だな。でも、アラフィフになって手にしたからこそ、実感を持って読み込める感覚もある。


なぜ、やることがなくていいのか。「目の前の仕事を大切にし、そこに全力を注ぎ続けることで、ある時点で『突き抜ける』ことができる。ある意味で、その変化は必然」と、大原則をまず述べる。


では、どうすればいいのか。「やりたいことがないなら、足元にあるやるべきことをやり、成果を上げるべき。でないと、未来が開けることはない」「必要に迫られて始めたことを突き詰めて、成果をあげていくと、思いもよらない方向にことが進んでいく」「何かしらの形でいいので、アウトプットとインプットのサイクルを回していくことが、最終的な仕事のクオリティを上げるうえでのポイント」と、まずは足元で頑張ることを提唱。
それを進めていくと、「mustを積み重ねて、できること=canのレベルを圧倒的に高めていけば、いずれ結果的に、それがwillとなっていったりする」「実践に裏打ちされた経験値だけが、真のcanになる」という変化が生まれる、というのは感覚的にマッチする。


そして、筆者自身が築いてきた『わらしべ長者的キャリア(mustを積み上げ、その場その場でやってきた結果、形になったもの)』の極意として「①クオリティを徹底的に上げよ:リアルな経験を積み、『So what?』で抽象化②常に人を驚かせよ:驚きは『口コミ』となり、自分の可能性を開く③食わず嫌いせず、何でも引き受けよ:『何でも頼めるやつ』という評判をつくれ」を提唱する。


人とのかかわりについては「『誰に、どの程度応援される人になるか』は、将来を決定づける大きな要素。そのためにはコミュニケーション能力が不可欠」「応援される人間になれるかは『フラットな人間関係を築けるかどうか』。その根底にあるのは、他者へのリスペクト。自分と違う経験を持っている人は、それだけでリスペクトに値する」「人とフラットに接していると、人脈は勝手に広がっていく」「今、興味関心を共にする人との関係を大切にしていると、思いもよらない選択肢が増えていく」と述べる。これは自分の実感からしても本当にそうだなあと感じる。
さらに「人に信頼されるには①相手に貢献すること②目的を持って人に会うこと」「『知らないこと』『わからないこと』については徹底的に人に聞く」のあたりがツボだ。


リーダーシップについては「自分の信念に基づいた意思決定と行動のスタイル」と定義。「正解のない中で、意思決定しなきゃいけない。それがリーダーの仕事」「リーダーシップは、アクションとマインドのサイクルをひたすら回すことで鍛えることができる」「自分を知り、自分を目覚めさせて解放させ、自分をリードしよう」のあたりが心に響く。


そのほか、気になったところは「ビジネスパーソンが語ることの価値は『自分の仕事を通じて世の中にバリューを提供していくということを、我が事として捉えているかどうか』」「『他人はどうされると嬉しいか』を考え、きちんと理解する」「目の前の仕事をするということが、社会の役に立つことそのものだ」「プレゼンは生き様で決まる」のあたり。


非常にためになる本なのに、めっちゃ読みやすい。アラフィフの自分が読んでも面白いんだから、若い人達には特におすすめだ。