今年116冊目読了。ベストセラー作家の筆者が、因幡の白兎やレ・ミゼラブル、オリオン座をモチーフにしながら不思議な事件とそこに隠された人々の思惑を描き出す小説。
最近、すっかり伊坂幸太郎にハマっている。この本も、ワクワクしながら、世界観に浸り、ストーリーに振り回され、最後の見事な伏線回収にアッと言わされた。悪事に手を染めつつも不器用で一生懸命な人たちも、また魅力的。この本を読んで、「レ・ミゼラブル」が読みたくなる、という本末転倒(苦笑)。
ネタバレ回避で、気になったフレーズを抜き書きする。
「自分が正しい、って思っている奴は怪しい。俺の言うとおりやれば間違いないのに!と考えている人間は、そのためには手段を選ばなくなる」「どのような人間関係においても大切なのは対等であることだ」「悪いことをして、自分だけは安全地帯にいる人間は、困るじゃないか。集団の規則を平気で破る奴は」
「人間はもちろん動物には、攻撃性がもともと備わっており、大事なのはそれをゼロにすることではなく、うまく発散させ、折り合いをつけることなのだ」
「社会において、人の行動を自重させるのは、法や道徳ではなく、損得感情だ」「一人ずつはいい人間でも、集団や会社になったら、倫理や道徳よりも別のものが優先される」
「犯人の提案や要求に対しては否定的な言葉を遣ってはいけない。交渉術の基本だ。『でも』『だけど』『ただ』といった接続詞一つで、立てこもり犯が逆上したケースは少なくない。相手の言葉を受け容れることが第一だ」
「無駄なところが、物語を豊かにする」
「深海よりも暗い光景がある。それは宇宙だ。宇宙よりも暗い光景がある。それは、大事な人を亡くした者の魂の内側だ」
「星ってのはやっぱり、夢がある。昔は夜にやることなんてないだろうから、見えるものといったら星くらいだろうし、深夜テレビもスマホもないんだから、時間は無限にあった。だから、空を見ながら想像力を膨らませていたんだろうよ。今じゃなかなかできない、壮大な遊びだ」