世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】星友啓「スタンフォード式生き抜く力」

今年110冊目読了。スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の筆者が、最高のグローバルスキル「生き抜く力」の磨き方を提唱する一冊。


端的に言えば「人を思いやる利他的な力は、生き抜く力の基礎になっている」「自己中ではなく、相手のいうことをよく聞いて理解する。忖度ではなく、心底相手に共感する。そのうえで、相手に献身的な行動を取る」ということに尽きる。その理論的な裏付けと、やり方の紹介に、しかつめらしいタイトルをつけた、という感じ。


生き抜く力の基本要素を「①聞き取る力②共感する力③与える力」と定義。
聞き取る力のために:会話に取り入れるべきこと「①相手の話したことを言い換え、確認する②相手の言うことを確認しながら詳しく聞く③相手の気持ちに共感を示す④相手の話に集中していることを示す」「避けるべきは、決めつけ、話の腰折り、アドバイス、否定」
共感する力のために:思いやり瞑想
与える力のために:親切行動をして、「どんな、誰のために、どうしてそうしたか。行動後にはその気持ちの変化、他の親切行動はあったか、さらに相手のためになることはあるか」を振り返る
とする。


フィードバックについては「評価者の癖が大きく出てしまう、自分の短所や弱点を指摘され続けると学習効果が下がる、よいパフォーマンスの定義が困難」であるが故にあてにならない、と指摘。「①客観的な基準にすがらず、自分個人としての率直な気持ちを伝える②『私ならこうすると思うけど、どう思う?』で相手を尊重する③抽象的基準でなく具体例で指摘する」ことを推奨する。


なかなか難しいことではあるが、「自分をネガティブな心の状態から救う救世主は自分しかいない」「数値や基準に現れないパフォーマンスが全体の成果を支えている。同時に、同じ基準の満たし方は、無数に存在する」のコメントは、何となく心の救いになる気がする。


多くの人が感情的になってしまう喧嘩と謝罪。喧嘩しない心構えとしては「①感情的にならない②違う意見があることを認める③意見が代わる可能性にオープンになる④論理的に暑苦しくない」。謝罪の際には「①してしまったことが何かを、謝る側がはっきりと認める②謝る側が謝られる側の苦しみや不都合を認め、心からわびる気持ちを伝える③つぐないを表したり、問題解決や今後の防止策を提案したりする」は、言うは易く、行うは難し…


自分をいわたるためには「①自分にやさしくする②不完全であることが人間の証、と意識する③自分の感じていることそのものを受け入れる」。幸せになるための正しいお金の使い方としては「①ものより体験を大事に②一人よりも他の人と③自分の個性に合わせて④与える力で人のためになる」。人のためになって、生きがいと意義を見いだすには「①自分の意志に基づく。強制されてやらない②相手との絆を強める③相手にどのような影響を及ぼしたのかを意識する④タイミングとスパイスを大切に」。生きがい人生のためには「①過去、現在、未来をバランスよく使いこなす②生涯をかけて学びを大切にする③情熱リストで、自分の熱意を育む④シャイな自分を捨て、社会でみんなとつながる⑤自分をリメイクし続ける⑥社会派の『はみ出し行動』を大切にする⑦社会の変化に貢献するヒーローを志す」とする。直感、サラリーマンには難しいが、それ故に?大事なことだとも感じる。


いちいち分類して理屈っぽいのは筆者が論理学者故だろうが、実際には巻末にある「エクササイズ」をどこまでやり切るか、ということにかかっている。理屈の本ではなく、最後にトレーニング本に変化するのが面白い。だが、慣れていない人にはうっとうしく感じるだろうな…