世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ダン・アリエリー、富永朋信「幸せをつかむ戦略」

今年10冊目読了。Preffered Networks執行役員・最高マーケティング責任者の筆者が、行動経済学をビジネスや政策課題に応用するデューク大学教授に、人間の幸せの源泉と職場のモチベーションについてたずねた一冊。


「所得や学歴よりも『自己決定』が幸福感に強い影響を与えている」「オートノミー(自主性)や多感覚体験(手触りや重み、選ぶプロセスや偶然の出会い)、消費の象徴的意味(小売店を支える)が大事なので、アマゾンではなく本屋に行く」


人間関係が難しい理由は「ものには『適応』できるが、人間は働きかけてくるので難しい」とし、「幸せな人間関係には『区切り』が必要。理由は、私たちが自己を違う形で定義するのを許すこと、環境が変わった時には行動を変えるのが簡単であることから」「カップルがうまくいくには、自分の期待値を下げることが1つ、もうひとつは、カップルが常に一緒にいることによって、互いを激怒させる可能性があることが多々あることを理解する。離れている時間があるからこそ、互いを恋しく思えるのであり、相手を恋しく思わなくなったとすれば、一緒にいる時間を減らす必要がある」と述べる。


現代の人間関係については「ソーシャルメディアは偽の世界観で、基準ではない」「自分自身の基準を持つには、どんな基準を持つか自分で選ぶ。もう一つの方法は、大好きな人たちともっと正直でオープンな議論をする」ことを理解すべきとし「私たちが知識経済へ移行するにしたがって、個人の裁量に任されることが増えていくということを、もっと深く理解する必要がある」と述べる。


幸福と意欲、意味については「やりがいのある幸福のためには、達成可能な目標、ゴールまで行く筋道を知っている、自分の主体性がある、ということが必要」「意味というものは他人の効用を良い意味で自分自身の効用に組み込むことから生じる」「私たちは良かれあしかれ、実際の消費と一緒に意味も消費する」「人をやる気にさせるには、まず、自分がクビにならないためにやるい最低限の仕事と、仕事に心から燃えていたらできる最大限のギャップである善意。もう一つは、やりがいのある幸福のためのモチベーションの複雑性がカギになる」


仕事をする上において陥りがちなのは「怠惰な嘘つきが生産ラインで怠けるのを防ぐ手順はたくさんあるが、実はそうした手順は本当に優れた人材が活躍することも防いでしまう」「信頼の欠如はモチベーションの代償を伴う」とし、「人が活躍するのは互恵関係にあると感じるとき、信頼されていると感じ、自主性を感じるとき」である。
よって、「(1)高い成果を出している人には、インセンティブとしての達成給はワークしない(2)低い成果に甘んじている人には達成給が効く」「官僚主義はモチベーションの敵である」から「結果ではなく過程に報いる」「従業員と経営陣の間にも公平さ実感を持たせる」ことを大事にすべきとする。


自分自身がどう幸せを追求するか、について述べた「自分の力が及ぶことと、及ばないことを区別する必要がある。大事なのは、自分の力が及ぶことだけに集中し、それだけを心配する」は、二ーバーの祈り「神よ 変えられるものを変える勇気を与えたまえ 変えられないものを受け入れる穏やかさを与えたまえ そして 変えられるものと変えられないものを区別する賢さを与えたまえ」を思い出させる。


人間の特性としては「一部の人を取り出し、自分の共同体から切り離し、人間らしくない存在と看做す傾向がある」「努力に値段をつける本能がある」「人間は自分が善人だと思い込もうとしながら、時折、悪いことをしてしまう。善行は目立たないけれど、悪い行いは本質を明らかにする」「『この10年でどれくらい変わりましたか』と人に聞くと、たいてい『すごく変わった』という答えが返ってくる。ところが、『今後10年でどれくらい変わると思いますか』と聞くと『あまり変わらない』という答えが返ってくる。実際にどうなるかと言えば、かなり変わるかもしれない」のあたりは、確かになぁと納得させられる。


かなり興味深い内容が多く、非常に参考になる。納得性も高いし、対談方式で読みやすいので、一読をお薦めしたい。