今年4冊目読了。リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長の筆者が、自らの体験を交えながら、働く目的、就労観について考えることを促す一冊。
これは良書だ。自身も過剰適合で苦しんだ、という経験をつまびらかにする筆者の姿勢もさることながら、読みやすい平易な文書、しかし洞察にあふれた中身であり、引き込まれるようにページをめくっていった。
働くうえでの普遍的な心の動き・流れについては「平穏な日常をありがたく思うようになれば、自然に、自分は周りに生かされていると思うようになる」「仕事の内容は変えづらくても、仕事をする上での人間関係や仕事の意味合いは、比較的簡単に変えることができる」「組織に依存しすぎることなく、よい仕事と能力開発のポジティブな循環を継続していくことで、仕事は楽しくなり、その領域での熟達者になり、自分の居場所は確保されていく」「失敗したこと、成功したことを振り返ることによって、学びが深くなる」「大事なポイントは試行錯誤の実験を楽しめるかどうか。何かを行う。そうすると今までと違う小さな差異に気づく。その差異を見出せるかどうか」「同じ仕事をやっていると能力の劣化がはじまる。危機感を持ち、新たな学びに挑戦し続けることが、居場所を確保することにつながる」「希望や目的を持って、その実現に向けて、実験し、学ぶ人生は楽しい」「『生活水準を高めたい』『不安に駆られる』『周りから認められたい』という思いは、ゼロにはできない。しかし、目的意識を持つことによって、そういう思いとバランスをとることができる」などを挙げる。
どのように、働くということと向き合っていくかについては「『感謝する』『楽観的に考える』『親切にする』『定期的に運動をする』『人と比較をしない』などの意図した行動によって幸福度を高めることができる」「人によって、気づきが多い分野とそうでない分野があり、気づきが多いことを天職にしてしまえばよい」「『働く』ことを通じて『生き残る』ことと『幸せになる』ことを両立させるには、今の仕事を存分に楽しみ、そのことが明日につながるように調律する」「生まれつき与えられた才能を活かし、生き方や仕事を選ぶことに集中したほうがよい」「明日に向けての準備が今日の楽しみと繋がるようにする」「自分のやっている仕事が何につながっているのか、話をする人は変えられるのかということを意識する」「何も決めないよりは、仮決めしておくことのほうが、現代を生き抜くうえでは必要なこと。それは、本質的ではないかもしれないが、何かを決めておかないと前に進めないのも事実」ということを薦める。
実際の心構えとしては「コントロールできないことを受容するものの、コントロールできることはコントロールしようという姿勢が『生き残り』と『幸福になる』ことを促進していく」「日常においては、失敗したことを永続的、普遍的に思わず、よい出来事を永続的、普遍的に思うように心がける」を提言する。
さまざま述べられている中で「従業員の能力を開発して、業績を挙げさせるための仕掛けを考えるのが、人事や経営者の仕事」「人は、自分のことを尊重している人を尊重する。相手を尊重し、受け入れることで、自分が周りに受け入れられていく。そして、自分も自分を受け入れていく。そういう順番」「過去はコントロールできない。過去にできなかったことを悔やんでも仕方ない。しかし、過去をどのように解釈するかということはコントロール可能」のあたりは深く共感できる。
働くことについて、時には見つめ直す。そんなときに、この一冊を読んでみることをお薦めしたい。