世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ「意識はいつ生まれるのか」

今年179冊目読了。ミラノ大学教授とウィスコンシン大学精神医学科教授の筆者が、脳の謎に挑む統合情報理論を説く一冊。


とても専門性が高く、なかなか素人にはハードルの高い本だ。それでも、なんとかくらいついてはみたものの、なかなか読みこなすには至らず…  


意識と視床-皮質系の関係については「視床-皮質系は意識を生み出し、小脳は生み出さない。このふたつの部位には、共通する特徴がたくさんあるのに、意識の経験にかんしては、これ以上はないというくらいに違っている」「意識を生みだす基盤は、おびただしい数の異なる状態を区別できる、統合された存在である。つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある」「人間の視床-皮質系の基本原則は①違いのレベルが高い要素がたくさん集まっている②高度に専門化した視床-皮質系の要素同士にあるつながりは、近距離のものも遠距離のものもあり、各要素はそのネットワークに乗って、すばやく効率よく相互反応できる」などと述べる。


睡眠に関する部分では「発せられる電気信号の数でいえば、大脳皮質のニューロンの大半が、睡眠時も覚醒時と同じくらい活発であることがわかっている」「さまざまな理由から、脳を毎晩覆う単純な波は、皮質回路を掃除し、覚醒時の活動で溜まった”残滓”を取り除いてくれると考えられる。もしそうならば、睡眠時に意識がないという代償を払っているおかげで、毎朝、掃除が終わった軽やかな脳に、新たな情報を仕入れることができる」というあたりが興味深い。


脳と意識についての提言として「意識というものは、眼の前にある状態よりも、潜在的なレパートリーの大きさに関係があるのかもしれない」「脳の発達は、すでに脳内にあるつながりが消えることによって起こる。新しいつながりが加わるよりも、消滅するほうが、脳の発育に貢献するのである」のあたりは、かなりびっくりするような価値観の転換であり、にわかにはついていけないレベルだ…


非常に難しい本だったが、それでも生きていくうえで「知識があるのと、実際に体感するのとでは雲泥の差がある」「どんなことでも『あたりまえ』とあしらわないように心がけたい。抽象的、形式的な記述に陥ることのないようにしよう。そして、簡単に得られる答えに満足しないようにしよう」「探索し、想像し、欠けているものを補うのである。そうして、世界を理解し、世界を内側から照らし、世界をもっと豊かにしていこう」という構えを持つことの大事さについては、おおいに共感する。面白かったが、あまりお薦めはできないかな…興味がなければ苦しいだけだと思う。