世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ダイアナ・ホイットニー「なぜ、あのリーダーの職場は明るいのか?」

今年139冊目読了。経営コンサルティングの第一人者にして、コーポレーション・フォー・ポジティブ・チェンジ社長の筆者が、ポジティブパワーを引き出す5つの思考法を提言する一冊。


21世紀のリーダーシップが直面している現状を「①新しい世代が社会を担うようになってきた②多様であることが珍しくなくなった③新しい社会の仕組みが生まれている④全体を見据えた持続可能なアプローチが不可欠になった」と指摘。「あらゆる物事が相互に関わり合い、すべてがつながり合っている現代においては、関係の中に生まれるプロセスや行動を通じて、人が互いに関わり合い、物事を引き起こす力としての価値探求型リーダーシップが必要になる」として、成功の鍵は6つのフリーダム「①かかわりの中で自分を知ってもらう自由②話を聞いてもらう自由③仲間と共に夢を描く自由④自分の役割を選ぶ自由⑤人に支えられて行動する自由⑥現実をポジティブに捉える自由」と、成功を導くリーダーの共通点「①組織やコミュニティのさまざまなメンバーと積極的に関わり合い、より良い仕事のやり方を見つけ出そうとする②積極的に学び、変化を恐れない③ポジティブであることが力を生み出すことを心から信じている④人を大切にしている。多くの場合、人の学び、成長、発展を支援することが、組織やビジネスの使命だと感じている」を挙げる。


筆者が薦める価値探求型リーダーシップの5つの思考法「①インクワイアリ―(強み発掘思考)②イルミネーション(価値『見える化』思考)③インクルージョン(つながり拡大思考)④インスパイア(ワクワク創造思考)⑤インテグリティ(みんなの利益思考)」を挙げ、その変化そのものになるために「品性を磨く、人の創造性を開花させる、垣根を超えた協働を促す、革新的な社会構造をデザインする、ポジティブな変化のきっかけをつくる」ことだ、と主張する。


具体的な取り組みのヒントとして「価値の反転をうまく行うためのカギになる質問は『あなたが本当に望んでいるものは何ですか?』である」「批判的な意見に対して取るべき態度とは、まずは現状と理想の状態との間のギャップを認めたうえで、理想的な状態がどのようなものなのかを尋ねること」「ユーモアには人や職場をポジティブな方向に向ける大きな力がある」「多くの人にとっては、他者と具体的に関わり合うことよりも、それらの人びとに関するストーリーを聞くことによって他者を知ることのほうがはるかに多い」「希望は『ウィル・パワー(意志の力)』と『ウェイ・パワー(方法の力)』の2つの側面から考えられてきた」のあたりは、実践的だと感じる。


パワフルに生きるためのヒントとして「ポジティブな潜在力を探すための8つの視点は①強み②成功事例③シニカルな意見④大きな感情の揺れ⑤とんがったアイデア⑥関係性⑦反対意見⑧目先の変わったこと」「自分に正直であるための7つの実践は①好きなことを、好きな人と共に②自分の夢に従う③自分の強みを活かす④創造性を発揮する⑤価値観に根差した決断をする⑥言行を一致させる⑦関係に責任を持つ」のあたりも、なかなか難しいが、訓練のし甲斐があるように感じる。


心に響いたのは「自分自身の内側に響くさまざまな声を受け入れ、信頼し、さらに大きく響かせられるようになれば、自分以外のさまざまな声を受け入れ、敬意を払うことができるようになるはず」「言葉を発するということは、特定の世界観に基づいた現実をつくり上げること」というところ。これは、心に刻んで今後のリーダーシップ発展に生かしていきたい。


やや表現が回りくどい(翻訳の影響か?)ので、読むのに疲れるというのが正直なところだが、それだけの価値はある一冊。21世紀を生きるリーダーは、押さえておきたい本だ。