世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】和田寛「スキー場は夏に儲けろ!」

今年65冊目読了。白馬岩岳マウンテンリゾート代表の筆者が、「誰も気づいていない『逆転ヒットの法則』」を明かす一冊。


タイトルほど『誰も気づいていない』感はないものの(苦笑)、中身は骨太な主張で、なにせ実績を作っているからその説得力は半端ない。


そもそもの問題提起「ビジネスを正しく定義できるか、環境の変化に応じて正しく再定義できるかは、その企業の生死を分ける重要なポイント」は、VUCA時代においては本当にそうだと思う。


筆者の主張は「隠れた資産を見つけ出し、徹底的に活用すること」であり、隠れた資産とは「①モノ:土地や建物、機械などの物理的な資産や、その土地固有の景色など②ノウハウ:既存ビジネスを通じて蓄積された社内のケイパビリティ③ヒト:既存ビジネスを通じて培った顧客接点やファン」を指すと述べる。


筆者のこだわり「安易に他のモノマネをしない」「他の事例を参考にする時は、いい要素をきちんと構成し直し、新たな付加価値を加える」は、確かにそのとおりだろうな。猿まねではうまくいかない。
そして「地元のことを熟知した『内部の目』と、外から見た『外部の目』をうまく融合させる」「外部の目を養うためには、『自分でよく遊ぶ』『いろいろなことに興味を関心を持ち、試しにやってみる・行ってみる』」「最後は自分が好きなものがよいと信じるほかない。だからこそ、なるべく多くのモノを見て、その背景にあるものを深く理解しておく」は、観光業に携わる者としては非常に耳が痛い…


筆者は「1カ所だけを深掘りするのではなく、広くエリアに点在する隠れた資産を同時多発的に掘り起こしたほうが、魅力の発信がスムーズにできる」と、エリア開発を述べるあたりは視野が広い。


パートナーシップ構築のステップとして「①『隠れ資産』を見つけ、言語化する②『隠れ資産』を活用するのに適したパートナー候補をリストアップする③最初に断られないように丁寧にアポを入れる④自社と相手方の強みのバランスに応じた最適なパートナーシップの形を見つける⑤パートナー候補に、組むメリットを明確に伝える⑥うまくいかなくても諦めない。最後は情熱と気合い」。心構えとしては「ダメでもともと。うまくいけばラッキー」「先方に提示した『メリット』をきちんと実現できるよう、こちらも努力を続ける」が大事だ、と述べる。


ある大学の講義で聴いたことと同じだな、と感じたのは「地元の人を応援団にする」ために「『小さな成功体験』を積み重ねて信頼を勝ち得ることが何よりも重要」のところ。成果に勝る牽引力はないんだよな。


財務的側面の指摘「しっかりと価値があるものをつくり、それに見合った対価をしっかりと頂戴する。そうして頂戴した対価を次につながる投資に回していくことで、どんどん魅力を高めていく」「自らが持つ『隠れた資産』に光を当て、コンテンツとして磨き上げることで、お客さんが『払ってもいい』と思う価格を上げる」「攻めるときこそ脇が甘くなりがちなので、コスト管理を徹底し、次につなげる投資を実現させていくことが大事」は、金勘定系が弱い自分には耳が痛い…


成功のためには「『球をたくさん、矢継ぎ早に打つ』『球をたくさん打ち続けることのできるチームをつくる』」。必要なマインドセットは「計画よりも実験、実験を通じて当たりそうだと感じた」というのは本当に参考になる。そうしないと、新しいモノは生まれてこないよな…