世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ハル・グレガーセン「問いこそが答えだ!」

今年43冊目読了。マサチューセッツ工科大学リーダーセンター所長にして、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院上級講師の筆者が、正しく問う力が仕事と人生の視界を開く、と解く一冊。


まず、「問いというのは、そもそも自分の意見を強く言い立てるものではない。それは異なる角度や別の筋道からもっと深く考えてみようと促すことだ」と延べ、考え方の枠組みを変える問いの共通点は「①初めて問われたときには誰もが目を見開いて驚くが、あとから振り返ると、至極当然の問いだったと思われる問いである②生産的な問いである」とする。
優れた問いの効能として「『自分が知らないことを知らない』ことの危険性に気づける」という指摘はなるほど納得。


そして、なぜ、今、問いが大事なのか。「現代の世界では、社会的な言葉のやりとりがあるほとんどの領域で、問いが好まれず、建設的な問いを立てる発想力に富んだ人間が育まれにくくなっている」「生産性至上主義と、職場にはびこる権力闘争が問いのプロセスを腐敗させる」「問いが権力の追求者たちによって攻撃的に使われているのを目にしているせいで、問うことが攻撃的な行為だという印象を植え付けられてしまっている」は、確かにそうだよな・・・


問いを持つことの難しさを「自分がまちがっていれば必ず問いが生まれるわけではない。自分が間違っていると思うときに初めて問いは生まれる」「正しい問いがひらめくためには、もっと長い時間、自分はまちがっているという思いを持ち続ける必要がある」と言及。
そんなこの現代社会で、どうやって生きるか。「知っていることより、知らないことにわたしたちはわくわくする。知らないとはつまり、それだけ学べることが多いことを意味する」「やっかいな経験や情報にさらされなければ、わたしたちの成長や学習は止まってしまう。問う能力も衰えてしまう」「慣れない状況を乗り越えようとしたりするとき、わたしたちは本能的に五感を研ぎ澄ませて、あらゆる種類の情報を取り入れようとし、心の中は問いで埋め尽くされる」「自分たちとさまざまな面でちがう人間と仕事をともにするのは、たいていの人にとっては楽なことではない。その不快さから、触媒的な問いは生まれ、創造的な洞察がもたらされる」のあたり、問いというテーマを通して考えさせられる。


問いを出すために意識すべきこととして「黙る。そのために①相手の言葉にじっくり耳を傾ける②言葉以外の情報も取り入れる③頭を埋め尽くしている雑音を取り除く」「ひとりきりになって深く考える時間を作る。それはつまり、自分自身の考えに耳を傾けることを意味する」「積極的にまちがうこと、不快な場にあえて出ていくこと、黙って塾講することのたいせつさはつねに忘れないほうがいい。ふだんより確信が持てず、ふだんより不快で、ふだんより口をつぐんでいなくてはならない状況に身を置くことで、心の奥からわいてくる問いを増やせる」は、難しいが必要なことだ。そして、そうやって得た問いを「画期的な問いから生まれた取り組みに他者の協力を得たいなら、特に磨いておきたいのはストーリーを語るスキルだ」と役立てる道も大事。


さらに、「世界の問題やチャンスが大きければ、それだけ大きな洞察が求められ、大きな洞察のためには、それだけ大きな問いを立てることが必要になる」「『大きな問い』は『根本的な問い』とも言い換えられる」と、問いのスケールについても言及しているあたりがすごい。


問いに関する深い洞察も素晴らしいが、この引用文「あなたがつまづいたところに、あなたの宝はある」が非常に心に刺さった。何にせよ、これは良書だな。