世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】BJ・フォッグ「習慣超大全」

今年95冊目読了。行動科学者にして、スタンフォード大学行動デザイン研究所創設者兼所長の筆者が、「小さな変化がすべてを変える」ことを提唱する一冊。


分厚いが、これは興味深い。早速、少し取り組んでみたが、確かに習慣化が圧倒的に速くなる。


習慣について「永続的な変化を起こすためには『天啓を得る』か『環境を変える』か『小さなところから習慣を変える』の3つしかない」「着実かつ持続的な唯一の方法は『小さく始める』こと」と、既存の概念を大きく転換させる。


意識的な行動を無意識の習慣へと短時間で転換するには「①アンカーの瞬間:すでに習慣になっている日課によって、『小さい行動』をすることを思い出す②小さい行動:アンカーの直後に『小さい行動』を実践する③祝福:『小さい行動』を取った直後に自分を『祝福』する」という簡単な手法を提唱。
あらゆる行動を司る公式として「B(Behavior:行動)=M(Motivation:モチベーション)A(Ability:能力)P(Prompt:きっかけ)」としたうえで「行動デザインの中で、もっとも取扱が簡単なのが、きっかけ」と述べる。


そもそも、やる気の根源を「モチベーションの3つの源は、人(もともと内在している欲求)、行為(ともなう報酬や罰)、状況(行動をうながす状況)」と読み解く。


行動(いますぐに着手できること)を願望と結果と峻別することを提唱したうえで「簡単で効果的、かつ具体的な行動を提示する」べき、と述べる。黄金の行動の3つの条件は「1:願望の実現に『効果的』である。2:『自分が望む』行動である。3:『実行可能』な行動である」とし、「『したい』と『できる』が一致した行動が定着する」とする。
モチベーションについては「時間の経過とともに不規則に変化するが、能力は習慣を繰り返すにつれて向上する」能力を調整する要素は「①人:スキルを高める②行為:行動を小さくする③状況:道具や手助けを使う」と読み解く。
タイミングについては「新しい習慣を身につけるには、どの行動の『あと』にするかを考えるべき。『場所』『頻度』『テーマ』をマッチさせる」「ある行動の『最後の最後にくる動作』に着目する」「『合間の時間』の力を過小評価してはいけない」と主張する。


祝福については「ユーモアがもたらすポジティブな感情には、行動を強化する力がある」「習慣を作るのは反復ではない、頻度でもない、魔法でもない、感情なのだ」「祝福は即座に行うとともに、感情を強く感じることが大事」「自分が望ましい行動を取ったと気付いたら、定着させるために祝福すればいい」と、その大事さを強調。
それでもうまくいかなければ「行動の流れを実行してすぐに祝福する『リハーサル』を7~10回繰り返す」と述べる。


悪習をやめるには「通常、望ましくない習慣は、たった一度力を加えただけでは排除できない。体系的に取り組み、いちばんほどきやすい結び目を探す」「苦痛をともなう努力に集中してはいけない。まずはそれとは別の領域にある習慣を身につける」「きっかけを①取り除く②避ける③無視する」「きっかけをつなぎかえる。あるきっかけが生じたとき、従来の習慣に代えて新しい習慣を行う」と提言する。


気を付けるべきこととして「やる気も意志の力も、その性質上、移ろいやすく、あてにできない」「私たちには先入観があり、何かを達成しようとするなら徹底的に取り組まなくてはいけないと思い込んでいる。だが、成功者の物語がメディアで印象深く伝えられるのは、それが『例外的』だから」「人に頼ったきっかけは行動デザインとして避けるべき」と述べるあたりは、自分が今までの常識という呪いに囚われていることを痛感する。


人生を生きるうえでの心掛けとして「人は不快さではなく、心地よさを感じることで前向きに変わることができる」「人生を自分自身の『変化の実験室』として扱う」「『完璧』を目指してはいけない、目指すべきは『継続』」は、大いに参考になる。これは良書だ。一読をお薦めしたい。