世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」

今年143冊目読了。アメリカ最大の広告代理店・トムプソン社の常任最高顧問、アメリカ広告代理業協会会長などを歴任した伝説の広告マンである筆者が、その知恵を惜しげもなく披露する一冊。


まず、その薄さにびっくり。しかし、そこに簡易にエッセンスが詰まっているのが凄い。


そもそも、知識と技術の関係について「知識は、よく消化されて、最終的に、新鮮な組み合わせと関連性をもった姿となって心に浮かび出てこなければ意味がない」「どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第一に原理であり第二に方法である」とズバリ斬り込む。


イデアの本質については「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」「既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存することが大きい」「事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切なものとなる」「広告のアイデアは、製品と消費者に関する特殊知識と、人生とこの世の種々様々な出来事についての一般的知識との新しい組み合わせから生まれてくる」「経験を直接的間接的にたえず広めてゆくことはアイデアを作成するどんな職業にも極めて大きな影響力を持っている」など、鋭く指摘する。


イデアの作られる全過程として「①資料集め②心の中で資料に手を加える③意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる④アイデアの実際上の誕生<分かった!見つけた!>という段階⑤現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる」と切り分け、特に③は「問題を無意識の心に移し諸君が眠っている間にそれが勝手にはたらくのにまかせておく」、④は「つねにそれを考えていること」が大事だと説く。


そして、この本の軸となっている「アイデア作成の公式を惜しげもなく公表するのは、①この公式は、説明すればごく簡単なので、これを聞いたところで実際に信用する人はまず僅かしかいない②説明は簡単至極だが実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知的労働が必要なので、この公式を手に入れたといっても、誰もがこれを使いこなすというわけにはいかない」という理由を挙げられると、納得するやら、いやはや…


そのほかにも、「言葉は人事不省に陥っているアイデアだといってもよい。言葉をマスターするとアイデアはよく息を吹き返してくるものである」「①好きなことをやり②それで食べることができ③そのうえそれが他人のためにもいささかの役にあった人生が自己実現の人生」のあたりは生きていくうえで参考になる。


読みやすいが、「言うは易く行うは難し」の典型のような本。しかし、一読は必要だろう。特に、AIと共存し、いかにアイデアを思いつくか、が人間の生存意義になってくるような現代社会においては。