世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】有川浩「阪急電車」

今年142冊目読了。ベストセラー作家の筆者が織りなす、様々な人間模様の交錯が絶妙に楽しくほっこりする一冊。


「空の中」が抜群に面白かったので読んでみた。SF小説だった「空の中」とは全く毛色が違う、日常に根差しながらも少し非日常、という匙加減が絶妙で、短い話がいくつも不思議に絡み合っていく様が楽しく、ところどころほっこりする。


着想も秀逸なら、盛り込まれた話も極めて正義感溢れている。読んで納得、いい話。そして、少し甘酸っぱい青春も織り込まれていて、アラフィフのオッサンには些かむず痒い。


ネタバレは嫌だし、いつも読書に教訓を求めたがる自分としては、そんな堅苦しいことを考えずに「読みながら感じる」本だな、という読後感なので、いつもの「気になったフレーズの本からの抜き書き」はメモしない。その代わり、児玉清の「解説」もまた秀逸なので、そこから。


「電車に乗っている間は、いわば人生のつなぎの時間なのだ。乗り物に身を乗せて目的地までの時間は人間にとってなにやらエキストラ・タイムなのだ」「しかし、視点を別の角度にしてみると、乗り物というのは運命共同体だ。乗客は期せずして身を寄せ合った仲間たちということもできる。」
「人間は一人一人誰もが自分の物語を背負って人生を生きている。物語と物語が一杯に詰まっているのが乗り物なのだ。いろいろな物語がぶつかり合えば当然、そこにまた新たな物語が生まれる。つまり、電車は時々刻々新たな物語を生み出す絶好の密室であり源泉なのだ」
うーん、乗り物好きには、心から染みる言葉だ…