世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】土屋健「ザ・パーフェクト」

今年118冊目読了。オフィスジオパレント代表にしてサイエンスライターである筆者が、日本初の恐竜全身骨格発掘記として多面的に発掘の背景にある物語を描き出す一冊。


自分の傾向として「実用書だったり、心構えに役立つ本だったりを読みふける」という癖があるのだが、この本は恐竜好きの息子を喜ばせる、ただそのためだけに図書館で借りてきた。しかし、読んでみると、通称「むかわ竜」というハドロサウルスの発見を、関わった多くの人々の視点から描き出すので、ワクワクしながら読み進めた。昔、「ドラえもん のび太の恐竜」で興味を持った(※2021年において40代の男の子なら、結構多いのではなかろうか)一人としては、当時を思い出すような気持ち。
そして、丁寧な筆致で「様々な形で、むかわ竜発掘に関わった人たちの人生と、その交錯」を描き出す様子がとても面白い。「人に歴史あり」とはよく言われることだが、そんな精緻な寄木細工のような協力があってこそ、世紀の大発見に繋がったんだな、ということが実感できるし、未知のものに挑戦していくワクワク感を味わうことができる。本当に、子供に戻ったような気持ちになる。


普段の読書だと「この本で学んだこと、知った事は何か」という観点で考えがちなのだが、この本はそんなことを一切無視して「ただ、未知のものに挑む面白さを呼び覚ましてくれる」ということをたっぷり味わい、そのことに感謝する。そんな本だ。恐竜と化石発掘についての知識ももちろん得られるのだが、それよりもワクワク感。これに尽きる。