世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【どんなものが世界遺産なのか?】

個別の世界遺産を語る前に、「どんなものが世界遺産なのか?」について、伝えたい。
 
〈なんでできたの?〉
1960年、エジプトで、ナイル川に「アスワン・ハイ・ダム」を建設することになり、アブシンベル宮殿が水没する事となった。
「これはいかん!」と、世界が協力してアブシンベル宮殿を64m持ち上げ、ダム湖の上に移動させる(!)という荒業で救った。
丁度この頃「開発と環境保全」についての議論が高まっており、「顕著な普遍的価値を持つものは、人類全体の財産として保全し、未来に引き継ごう」という趣旨で、国際条約として「世界遺産条約」が採択された。
 
〈他の取り組みとの違いは?〉
世界遺産条約がユニークなのは
・自然と文化を一体で保護する
・国を越えて、環境保全と開発について「物件」という具体的な対象を通じて考える
の二点だろう。他にもラムサール条約(湿地保護)などはあるのだが、守備範囲の広さ(文化+自然)もあって、世界の条約の中で一番成功した、とも言われている。
 
世界遺産を判定する基準てある顕著な普遍的価値とは?〉
人類全体にとって現在だけでなく将来世代にも共通した重要性をもつような、傑出した文化的意義や自然的な価値。
 
〈観光との関連性〉
「人類全体の、未来に引き継ぎたい財産」ゆえ、当然、貴重なもの、価値のあるものである。となると、観光したくなる。
…という流れなので、「観光ありき」ではない。世界遺産イコール素晴らしい観光地、というお墨付きではない、のである。
時に「ガッカリ世界遺産」などという揶揄の声が聞こえる資産もあるが、これは専門知識が必要だったりする為に「一般的な観光には適さない」のである。
 
では、世界遺産たる「顕著な普遍的価値」の「必要・十分条件」は何か。それは、改めて。

【参考図書】
世界遺産検定事務局「はじめて学ぶ世界遺産50 世界遺産検定4級公式テキスト
タイトルどおり、世界遺産のアウトラインを掴むには最適。特に、世界遺産とは何か?ということについては、わかりにくい専門書が多い中で、入門書として簡潔に書いているのがいい。