今年58冊目読了。作詞家にして城巡りが趣味の筆者が、12城を回りながら、歴史や自然、人々に触れていく様を記した一冊。
紀行文的だが、筆者の知識量も相まって、なかなか重厚で読み応えある新書。
知られていないところだが、「幕末の時点で存在していた天守は60余、明治維新後に残った天守は20。太平洋戦争の空襲で水戸城、大垣城、名古屋城、和歌山城、岡山城、福山城、広島城の天守が失われ、1949年の失火で松前城の天守が焼失した。現存するのは弘前城、松本城、丸岡城、犬山城、彦根城、姫路城、松江城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城」というのは悲しい歴史。60も天守があったら、全部回るのも大変だっただろうな。
個別の城についての解説はかなり詳細なので省くとして、自分が恥ずかしながら知らなかった「現存天守のある城の中で、大手門が残っているのは弘前城、高知城、丸亀城のみ」「現存天守のうち、明治維新後に入札にかけられたのは松本城、丸岡城、姫路城、松江城」のあたりは勉強になる。
世界遺産検定マイスター、国宝検定上級、城郭検定2級保持者としては「文化遺産は国民の財産。自分の持ち物ではないが、自分たちの宝。そう思った時、今まで守り伝えてくれた人々への感謝の気持ちがわいてきた。私たちは気楽に楽しんでいるが、守り伝える努力は大変なものだ。一度なくなってしまえば二度と戻らない。復元されたとしても、それは本物ではないのだ」「城を伝えていくということは、同時に、日本の自然や文化を次の世代へつないでいくことともいえる」の筆者の主張にはおおいに賛同する。
個人の感想ベースなのに、知識がしっかりしている上にわかりやすい筆致で安心してすらすら読める。城好きと言わないまでも、ちょっと歴史に興味がある、くらいで手にしても十分楽しめる本ではなかろうか。