今年24冊目読了。東京学芸大学准教授の筆者が、子どもとの対話形式で『読解力』の本質とその鍛え方を説く一冊。
小6の娘のために借りて読ませたら「面白かった」と言っており、どれどれと読んでみたら、なかなか大人にも十分に興味深い内容だった。
どうやってテキストの意味を取るのか。「意味の単位は『命題』。命題数が多い盛りだくさんな本は難しい。命題と命題の関係がはっきり書かれていない場合には、それを推測しなくてはならないので、やっぱり難しい」「知識の枠組みが当てはめられると分かりやすくなる。本の目次や概要を読むことは、適切な枠組みをもって読むことを助けてくれる」は、確かにそのとおり。
知識はどう脳に入るのか。「知識は引き出しじゃなくて『連想関係でつながったネットワークになっている』」はまさにそのとおりで、「繋がりを覚えやすくするのは、ひとつは『整理:グループを考えて(意味・品詞など)をまとめたり、対比したりする』、もう一つは『意味づけ①イメージ:単語が表す状況をイメージする②物語づくり:単語を使ってストーリーを作る③意味を持たせる:語呂合わせなどで覚えやすい意味を持たせる」という手法もよく言われるところである。なので「文章をコピーするようには憶えられない。より一般的な内容やその要約(マクロ命題)は忘れにくいけど、細かい情報(ミクロ命題)は忘れる。構造を把握してマクロ命題を忘れないようにしよう」という対応も非常に妥当。
読解力を向上させる6つの方略として「基本的な読み方コントロール、明確化、要点把握、理解チェック、構造注目、知識の活用」を挙げる。
理解しやすい物語化については「視点の偏りが出る反面、面白さに繋がる演出でもある」と、その功罪を指摘。また、図についても、効果は「①必要な情報を見つけやすい②情報の位置関係が関係性を表してくれる③読む気になる」、注意点は「①必要な知識がないとダメ②図が注意を惹きつけすぎて理解の邪魔になることもある③マルチメディアの場合、目を使う情報と耳を使う情報の組み合わせ方がマズイとわかりにくくなる」と、メリデメを挙げている。
では、どうするか。「読解力を鍛えるには、分かっているかチェックする『メタ認知』が重要。だけどメタ認知はサボりがち。メタ認知を鍛えるには、友達に説明したり質問してもらったりするといい」と処方箋を出す。
陥りがちな罠について「人間の考え方のクセは①『普通こうでしょ』という枠組み②『仮説を支持するもの』に注目してしまう傾向」がある上に「書いてあることが正しいとは限らない」と言及。「批判的読書のための方略のポイントは①言葉が都合よく使われていないか②省略や論理の飛躍で誘導されていないか③ほかの本と比べる④自分の知識と比べる」「基本は客観的に分析的に読むこと。でも主観もヒントになる」と対策を述べる。
平易なやり取りで理解しやすい一冊だ。「読むって『本に書いてあることをちゃんと受け取ること』と思いがちだが、書いてあることを自分で考えて判断したり、自分が知っていることと比べてみたりして、『納得しないこと』『判断を保留すると決めること』も大事な読解」「読んだら新しいことが分かった、友達と本を読むのが楽しい、という気持ちを大事にしたい」のあたりのまとめも良質で、確かに子供も大人もさらりと読みつつ楽しめた。