今年82冊目読了。大阪芸術大学客員准教授にして、日本ラグビーフットボール協会理事を務めながらも、退任させられた筆者が、大阪のおばちゃんが見た日本ラグビー協会の失敗の本質を暴き出す一冊。
新書ながら、今の日本社会の劣化の原因を鋭く抉る部分が多いと感じる。
そもそもの問題意識「物事を進めるときに一番大事なのは『大義があるかどうか』」「歳をある程度とってくると先が見えてきてしまうから、ついつい若い人の熱い気持ちにフタをするような行動を取ってしまう。だけど、なぜ新しい事に取り組まなければいけないかというと、『若い人たちの未来』を創っていかなきゃいけないから」は、確かに納得。そうしないと、世の中が回っていかない。
しかし、「とくに年配で地位のある方は、一度言ってしまったことを意固地になって変えられず、『俺は成功したけど、お前らのやり方じゃ駄目だ』と突っぱねてしまう人が多い」というオッサンがそれを妨げ、日本を停滞させているというのは確かにそう感じる…
筆者がラグビー協会でまざまざと感じた「イノベーションプロジェクトチームが清宮さんの言われたとおりにただその手足となって動く様子を見ていると、やはり強いリーダーにこそ冷静な参謀が必要」「理事も幹部も企業などで華麗な経歴を持つ人たちばかりなのに、大切なところでは黙っている。やり過ごすという印象」「責任をとりたくない『おっさん』たちが、上役の顔色を見て黙り込み、外部や若手からの改革案をスルーする」は、実際にその場にはいなくても、日本的企業にいれば「そうだよなぁ」と思わずにはいられない。いずこも同じ、ということか。
令和のおっさんの定義は「①組織からはじき出されたくないので、『ムラの長』には絶対服従。しかし立場の弱い人間にはとにかく高圧的②口癖は『みんながそう言っている』『昔からそうだよ』『それが常識だ』という思考停止ワードで、慣例や同調圧力で部下を黙らせる③とにかく保守的で、新しい技術や価値観に無関心。自分が退職する日まで”勝ち逃げ”できればいいので、組織が退化してもいいと考えている④そのくせ『アレオレ詐欺』の常習犯。人の功績、部下の功績は自分の手柄」は、以前からあったのだろうが、特に数は増え、質も悪くなっているように感じる。
なぜ、こんなことになってしまったのか。「平成という時代は、バブル崩壊後、景気も雇用も冷え込み、日本全体が長らく元気さ、明るさを失っていた。そのため、『おっさん』たちは、企業に蔓延する『後ろ向きな空気』をいっぱいに吸い込んで生きてきた。するといつのまにか年功序列にしがみつき、権力者に付き従い、長いものに巻かれるのが『安全』だという思考に陥ってしまう。その結果、会社をよりよい方向に発展させたり、社会に貢献する仕事をしたいという『大義』よりも、目先の『帳尻合わせ』が先に立つようになる」と述べ、その背景には失われた30年がある、という分析には説得力があると感じる。
では、どうすればよいのか。「どんな革命でも、成功させるにはそれをサポートする後ろ盾が必要」「男女の『数』だけではなく、『機会』そして『情報量』を均等にすること、『サポート体制』と『心理的安全性』が確保されることがなにより大事」という言及は参考になる。
アラフィフとしては耳が痛いフレーズが多いが、だからこそ読むべき本なんだろうな。