世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】岡本純子「世界一孤独な日本のオジサン」

今年45冊目読了。コミュニケーションストラテジストの筆者が、人々の精神や肉体をむしばむ『孤独』の現状や背景を探っていく一冊。


アラフィフで、日本のオジサンど真ん中の自分としては、これは読んでおかないと・・・と思って手にした本。納得の記述が多く、心しないとなぁ、と感じさせられる。


なぜ、日本のオジサンは孤独になるのか。「いざとなれば、『以心伝心』『言わぬが花』『沈黙は金』という言葉を盾にして、『言わなくてもなんとなく伝わる』のが日本文化、と言い訳しているところもある。そんな文化もあってか、日本人の『言葉にして表現する』コミュ力は著しく未発達」「日本では『孤独を楽しむ』『孤独と向き合え』という精神論も幅広く支持されている。男たるもの武士のように誇り高く『孤高』であるべき、という美学もあるようだ。こうした『孤独=善』という考え方が、日本を世界に冠たる『孤独大国』にしている」「日本の会社制度は、男性の『競争心』と『プライド』を食い物にする、よくできたシステムだ。金による報酬というよりは『やりがい』という報酬を意識させられ、自覚のないままに長時間労働が奨励される」と、その背景を指摘。
さらに「日本を覆う閉塞感の背景には、根源的な日本人の価値観や慣行、考え方、ライフスタイルの変化・変質などがあるが、一つの大きな要因として、日本人の『コミュ力不全』、さらにそこに起因する『孤独』があるのではないだろうか」と分析する。


オジサンの特性として「威張る、文句を言う、キレる…。『暴走老人』たちの行為を見聞きすると、気は滅入るばかり。要はみんな『寂しい』のだろう」と言及。その原因として「日本の高齢者は、他国の高齢者に比べ、同居している夫婦や子供との相互依存は顕著だが、別居の親族、友人、近所の人たちとの結びつきは弱い」「人々を結びつけていた家族や地域、企業などの磁力が弱まるにつれて、つながりを失い、放り出される人が急速に増えている」を挙げるところは賛同できる。


日本の男性のコミュ力不足の原因としては「女性が見知らぬ人に声をかけても問題になることは少ないが、男性だと、『セクハラだ』などと誤解を受けてしまうかもしれない」「口がうまい奴は信頼できない、何か裏がある、という通念もあってか、特に男性は『ほめること』をためらいがちだ」「男性は女性に比べて『ほめるのは下手』なくせに、実は人一倍『ほめられたい』生き物」「日本では『へらへらしている』とか『照れ笑い』というように、笑顔は威厳を失わせるという意識もある」という文化的・社会的側面もあると主張。これは確かにそうだろうな。女性に比べて、いかにも男性は関係を築くのが苦手だ…「膨張したプライドは、人とつながりを作ることを非常に難しくする。相手の気持ちに寄り添い、共感し合い、理解し合うことで、関係性は深化していくが、強すぎる『エゴ』は、そうした『歩み寄り』を阻むからだ。とはいえ、ひとたび築いた誇りや自尊心は、そう簡単に拭い去れるものではない」は、オジサンど真ん中として注意したい。


では、どうすればよいのか。「ソーシャルメディアなどネット上でのつながりは、対面のつながりを促進や補完をする効果はあったとしても、すべて置き換えられるものではない」「難しいのは、人と向き合う力は鍛え続けなければ、衰えていくということだ。いったん、外に向かう力を弱めると、どんどんと内に向かう力にからめとられ、遠心力が利かなくなる」と、生半可ではないことに触れた上で筆者は処方箋を出す。
処方箋「老後に向けて蓄えたい三つの元気の素は、『カネ』、『コネ』つまり人とのつながり、いざという時に支え合う、深くて緊密な絆。そして、『ネタ』つまり老後の題材、生きがいのようなもの」「『ネタ』を見つける3つの視座は『夢中になれるもの』『社会が求めるもの』『得意なもの』「日常から心がけたいのは『肩書き』や『名刺』によらないコミュニケーションになれておくこと」は、良い人間関係、良い老後のために不可欠のように感じる。特に『ネタ』は大事だ。50歳を迎える前から探しておかないと、大変なことになるだろうな。


オジサンはもちろんのこと、「なぜ、会社のオジサンはこんなになってしまったのか?」という疑問を感じる若い方にもお薦め。読みやすい。