世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】前野隆司「感動のメカニズム」

今年83冊目読了。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の筆者が、心を動かすWork&Lifeのつくり方を提唱する一冊。


新書で読みやすいし、筆者の考え方は好きなのだが、いかんせん、さすがに事例が少なすぎる…筆者の考えをまったく知らない人にはちょっと受け容れづらいかもしれないな。


そもそも、感動についての「感動のある人生は、豊か。感動しないと人生はつまらない」「感動の要因は驚きと共感であり、驚きは対象の新奇性によって生じる要素である一方、共感は対象の機能の意味理解と有利性をユーザーが感じることにより生じる要素」という定義は、そこまで考えている人がいないので、これはわかりやすい。


現代社会については「現代人は、効率的、合理化、売上最大化、そして、他者に打ち勝って生き残ることのために優れた社会システムを作ってきた。ところが、皮肉な事に、そのための競争や格差のコストが肥大化しすぎて、あくせくと働かざるを得ない。そのあまり、自分や仲間や社会のみんなの幸せについて考えることを忘れていた」と、その矛盾を説明し、故に「単に物を買うときにも、購入しようとする物自体に、特別なストーリーや、体験的要素を求める人が増えている」という流れになる、と読み解く。


筆者が提唱する『STAR分析』とは「感じて(SENSE)、考えて(THINK)、行動して(ACT)、つながる(RELATE)。これを、あなたらしく個性的に行えば、感動は生まれる」
●SENSE:五感で感じて感動。「きれい」「おいしい」「気持ちいい」「かぐわしい」
●THINK:頭で考えて『知見の拡大』に感動。「わかった」「なるほど」「すごい」
●ACT:動きや変化による『体験の拡大』への感動。「できた」「やった」「よかった」「すごい」
●RELATE:人や物へのつながりに基づく『関係性の拡大』への感動。「すばらしい」「ありがたい」「一緒だ」
という分析の仕方であり、頭の整理としてはなかなかわかりやすいと感じる。


それを鍛えるにはどうするか。「まずは、自分自身の日々の些細なことを『感じる力(S)』を養った後は、なぜ、どうしてを大事にして『深く思惟する力(T)』を高める。そうすれば、人は自分に自信が持て、自然と『行動(A)』が伴うようになる。新たな行動は新たな『関係性(R)』の構築につながる」とし、感動体験を増やせるようにすることを提唱する。


筆者は、幸せの4つの特性として「①新しいことを『やってみよう』②多様な人と『感謝』し合いながら接する③『前向きで楽観的』④『あなたらしく』」ということも提唱しており、いずれも参考になると感じるが、やはり事例の蓄積が少ないのがアキレス腱だな。個人的には、とてもしっくりくる考え方なのだが…