世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】鮎川詢裕子「最高のリーダーほど教えない」

今年16冊目読了。エグゼクティブコーチ、組織開発コンサルタントの筆者が、部下が自ら成長する気づきのマネジメントを提唱する一冊。


言っていることは、今までいろいろ学んでいたこと(主にU理論)と親和性が高く、そんなに新しい発見があったという感じはないが、文章がわかりやすく噛み砕かれているのがいいと感じる。


気づきということについては「『気づきの機会』こそ、成長機会そのもの。つまり、『教える』は、部下の成長そのものを阻害する」「行動を振り返ることによって、『気づき』を発見し、学びが生まれ、それが今後の土台になる」と、そのメリットを述べる。


リーダーと部下がうまくいかないのは「①部下の行動を変えようとしている②認識がズレたまま仕事を進めている③部下の力を引き出す関わり方を知らない」「『違い』を『間違い』として扱い始めると、実は本質的なポイントから論点がズレ、大切なことを見失う」ことに由来する。
そのため、「リーダーは、部下が十分に考え終わったあとにアドバイスを行う」「気づきに導くステップは①対話の基盤をつくる②聴き取る③行動を計画する」ことが必要で、
大事なのは「『答えを教える』のではなく『部下の内省を助け、自分で気づくことに導く』」「部下を信頼するけれども期待しない」「事実と解釈を意識して分け、先入観を持たずにありのままのじじを見ようと心がける。『〜と思ったこと』はあくまで仮説と考える」「『聴き取る』目的は、相手の状態を知り理解することと、部下の内省を促すこと」「質問をなぜ(Why)からどのように(How)に変える」ということだ、と述べる。


そして、「沈黙は部下の内省のためのゴールデンタイム」「『部下は自分自身で答えを見つけることができる』と信じる」「どんなにマイナスに思える言葉や考えや行動、反応、感情の奥には願いがある」と捉えることが必要だ、とする。


人間の特性として「人間の言動とは、その人の内側で起きていることが、外側に現れているだけ」「『気づき』が起きると、人は自然と変わり出す。自分の内側から湧いてくる答えなので、そのエネルギーは他人に言われた指示やアドバイスの比ではなく、自分を突き動かす力になっていく」に触れ、さらに一歩踏み込んで「人が心から信じたことを発揮する時、流れが変わることがある」「『こうなったらいいな』というその人が望んでいる願いや価値観がエネルギーの源泉となる」ということに言及する。


必要な心構えとして「リーダーは組織の期待に沿うことも大事だが、自分自身はどう思っているのか、それを大切だと思えるのか、自分らしく取り組めているのか、ということも同じように大事」「自分を偽ったり、卑下したり、尊大になったりするのではなく、『ジャッジのない素の自分でいる』ことを受け入れている感覚を持つことが、人としてリーダーとして何より重要」ということを提言する。


言うは易く行うは難し、だが、「自分に影響を与えているものは何か、深呼吸をして落ち着いて客観的に自分を取り巻いているものを眺めながら、今何が起きているのかを見ていく。そして、本来の自分の感覚を思い出し、この自分でいることを大事にしていくには『何が助けになるのか』を見つけていく」ということを大事にしていきたい。