今年192冊目読了。空港で働く人たちの人間模様を、それぞれの人達にスポットを当てながら生き生きと描き出していく小説。
第一作「あぽやん」第二作「恋する空港」に続く第三作。主人公視点で固定されていた二作とは異なり、色々な人がストーリーテラーとなることで、より多面的に空港の業務と人間模様が見えてくる。
小説はネタバレ回避が基本なので、気になった言葉の抜き出しをメモしておく。
「俯くな。今に囚われるな。まっすぐ未来に目を向ければ道は開ける。」
「未来を提示できる者こそが真のリーダーだ」
「もちろん幹部にも問題があったさ。しかしいちばんの原因は違う。与えられた仕事だけをこなし、危機が訪れても現状を変えようとしない、お前のようなやつが無数に集まってうちのグループをダメにしたんだ」
「弱いで片付けるのは、なんだか安直で、思慮が足りない気がする」
「40才になっても、この先、何年たっても、すっかり心が枯れてしまうようなことはない気がした。厄介なのは、かといってパワフルなわけでもないことだ。何かを期待しながらも、それに向かって積極的に行動を起こすようなフットワークはない。無理に動けば足がもつれて痛い目に遭う。いや、それを恐れて、もはや動かないのが第一選択だった」
そして、あとがきも実によい。「職場がなくなったり人がいなくなったりして初めて、自分にとって仕事とは何なのかを強く意識するようになった人々の姿である。その意識の変化も、職種や性格や年齢によって大きく異なる。一人の視点のみに絞った従来の形式では書けない物語ばかりだ」「たとえ職場がなくなってしまっても自分が働いていた事実は変わらないし、働いた中で培ってきたものはその場所と自分の中にちゃんと残り続ける」