世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】村上信夫「帝国ホテル厨房物語」

今年149冊目読了。帝国ホテル専務取締役総料理長まで昇りつめた筆者が、自分の半生を振り返った日経新聞私の履歴書」を冊子化したもの。


これはなかなか面白い。「黙って待っていたらチャンスはなかなか巡ってこない」「チャンスは練って待て」「留学は人生の大きなチャンスだ。それを『家の者と相談いたしましてから』と自分で決められないような男に、留学に行く資格はない」「欲を持て。そして急ぐな」「基本は慣れや惰性でつい忘れがちになる」という心構えは、凄みがある。


料理に限らず「現地の流儀を尊重しなさい。悪い点は見ずに、いいところだけを学ぶんだ」「同じ口から出る言葉なら、ほめよう。楽しく働けるのが一番だ」「管理職として何よりも大切なのは、人の心をよく読んで、気持ち良く働いてもらうことだ」「段取り八分。事前に用意しておけば、八割がたは成功」というあたりは、組織、人間関係において大事な教訓。


肝心の料理についても「高いメニュー、いいメニューは、料理の知識が十分にあり、高級な料理や伝統的な料理、そして流行の料理について理解し、咀嚼していないと書けない。だから、料理人は日々勉強が必要なのだ」「新たな定番料理の創作に力を注ぐ気概も大事なことだが、まず基本を徹底的に熟知するのが先決なのだ」「怒ったときは塩味がきつくなる」と、納得の言及。


年齢に関しても、「自分で『若い』と思っているうちは、若いままでいられる。気持ちが老け込むのが一番よくない。私は、何を始めるのにも『もう遅い』と後ろ向きに考えたことはない」「趣味が多いから、楽しくて年を取る暇がない」と、アラフィフに勇気を与えてくれる。


「食べ放題のバイキングというネーミングは帝国ホテルの社内公募で決めた。当時、ホテルの近くの映画館でカーク・ダグラス主演の海賊映画『バイキング』が上映されていて、船上で食べ放題、飲み放題のシーンがあり、その豪快さが話題を呼んだ。それをヒントに応募したものが当選した」というのは、知らなかったなぁ…