世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ダレル・ハフ「統計でウソをつく法」

今年112冊目読了。社会心理学、統計、心理テストを研究したフリーライターの筆者が、統計を使ってだます方法を知ることで、数学にだまされないことを提唱するビジネス書。


超古い本で、7年前に読んだことがあるのだが、西内啓「統計学が最強の学問である 実践編」に紹介されていたので、再読してみた。1968年の著作とは思えないくらいに面白いし、その内容が頭に残っていない時点で、自分の7年前の読み方がいかに浅かったか、ということを痛感させられた…


統計を使うには「統計に関する言葉を正しく理解して使う人と、その言葉の意味がわかる人とがそろっていなければ、結果はナンセンスな言葉の遊びにすぎない」とバッサリとなで斬りをし、「サンプルは母集団からまったく偶然に選ばなければならない」としつつ、「かたよりの原因を明確にできなくても、どこかにその可能性があるかぎり、えられた結果はある程度疑わしいと考えたほうがよい」「調査結果を読む場合におぼえておかなければならないことは、かたよりに対する不断の戦いには絶対勝てない」とする。


それ以外にも、数字を読む際に「ある数字が平均値と聞いても、それが平均値(算術計算)、中央値(中位数)、最頻値(並み数)のどれかがわからないと意味はない」「大切な数字がない時には、平均やグラフやトレンドなどを信用してはいけない」「プラス・マイナスの誤差ということは、いつも心にとめておかなければならないことで、誤差が書いていなければなおさらのこと、注意しなければならない」「グラフの縦と横の比に注意する」「二倍は、立体的にあらわされると八倍になってしまう」「パーセンテージはでているが、もとになった数字がないのはペテン」「プライベートなことへの調査は、いうことと実際とは一致していない」「現在までのトレンドは事実であるかもしれないが、将来にわたるトレンドは推測以外の何物でもない」などを注意点として挙げる。


因果関係については「前後の相関関係について誤謬を犯さないよう、相関関係の説明は偶然ではないか、注意深く読む」と述べながら「心にとどめておかなければならないことは、相関関係が実際にあって、それは実際の原因と結果にもとづいているのかもしれないが、たいていの場合、それをもとに行動をきめるときにはほとんど役に立たない」と切り捨てる。


統計のウソを見破る5つのカギとして、「1)誰がそういっているのか 2)どういう方法でわかったのか 3)足りないデータは何か 4)言っていることが違わないか 5)意味があるか(どこかおかしくないか)」を提言する。


当然のごとく、例は非常に古いのだが、手法は21世紀になっても全く変わらない(すなわち、われわれの「騙されやすさ」には変化がない)ということがよくわかる。騙されないためにも知識として持っている必要がある、という点、非常に優れた古典であるといえる。そして、それを自分がいとも簡単に忘れていた、ということも痛感した…知識をいかに「自分ごと」に引き寄せるか、というプロセスがないと、まったく役に立たない、ということだな…