世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中原淳・中村和彦「組織開発の探求」

今年63冊目読了。立教大学経営学部教授の筆者と、南山大学人文学部心理人間学科教授の筆者が、組織開発の歴史・理論を紐解き、実践に生かすことを提唱する一冊。

〈お薦め対象〉
人材開発・組織開発に関わるすべての人(いわゆる人事系、および現場リーダーに特におすすめ)
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『組織開発の歴史で得られてきた知見は?』には「知が生まれるのは、経験を振り返るとき。リーダーはタフな経験と内省で育つ。理性や言語より、感覚や体感を重視することで普段は気づかない自分に気づける。意識の下にあるような、普段見えていないものを問う。」。
『組織開発に際して、回避すべき気をつけねばならないことは?』には「わかりやすい二分法に陥る。短期的な経済成果を求め、人間性の部分を割り切る。知識や流派、理論、手法にこだわる。」。
『組織開発の時に、大事にしなければならないことは?』には「リーダーは、情緒的刺激と実行を中程度にし、配慮と意味づけを徹底的に行う。古い考えをアンインストールしたり、新しい見方にずらす覚悟を持つ。全員で現状に向き合う覚悟を持ち、ガチで対話に取り組む。大事なのは、今その現場で何が起こっているのかを探求し、見える化していく企画・調査の部分」。

自分の組織のメンバー、そして組織そのものを成長させたいと、微力ながら奮闘している身としては、「なるほど、こういう歴史的経緯があったのか!」と、今までの学びの体系を見せてくれる。かつ、今、現場レベルにフィットさせるのにはこういうことが大事、ということも、わかりやすい筆致で教えてくれる。

そのほかにも「組織開発とは、遠心力で分散していくメンバーの諸力を集め、workさせていくための求心力」「人がそこで働き甲斐を感じて幸せに働けるか、チームワークのよい職場を作れるか、活き活きした組織文化を醸成できるか、は大事な経営課題」「組織課題を見極め、実際にやってみないと組織開発は学べない」など、心から納得できる記述が多数。

ぶ厚い本ではあるが、読みやすいので、人材・組織開発に携わるすべての人、そして現場リーダーに一読をお薦めしたい。