世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ロバート・ゴーフィー/ガレス・ジョーンズ「ドリーム・ワークプレイス」

今年33冊目読了。ロンドンビジネススクール名誉教授と、IEビジネススクール客員教授の筆者(二人ともクリエイティブ・マネジメント・アソシエイツ共同設立者)が、だれもが最高の自分になれる組織の作り方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
組織を働きやすい場にしたいすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『なぜ現代の組織は問題を抱えているのか?』には「仕事の大規模化により、分業と時間差が発生し、自分の仕事のやりがいが感じられない。中間層が、個人のリスクと不安を最小化するために組織の型にはまろうとする。信頼がないのでルールが増えていく」。
『人が活き活き働く組織のポイントは?』には「DREAMS。違い(Difference)、徹底的に正直(Radical honesty)、特別な価値(Extra value)、本物である(Authenticity)、意義(Meaning)、シンプルなルール(Simple rule)」。
『今後、組織はどのように行動すべきか?』には「社員の強みを伸ばすため、能力開発のチャンスを与える・スター社員はそのまま輝かせ業績の低い社員は成長させる・価値を付加するという行為にもともと備わっている力を活用する。革新性と創造性のために広く多様なスタッフを育てる。リーダーを育てるために、早い段階でリーダー経験を積ませる・リーダー育成の仕組みに多様な人を入れる」。

このほかにも「個人が仕事を通じて成長できると感じるとパフォーマンスが高くなる」「人間は面と向かってのコミュニケーションを求めるように、生まれた時から脳に組み込まれている」「強制された規制は逸脱行為を生むだけ」など、体感的に理解できる人間行動への洞察が多数。この価値観に支えられているので、その主張もなるほど納得できる。

他方、著者自身も認めている通り、「DREAMSのすべてを満たすことは極めて難しい」。端的に言うと「仕事を自分がしている感を今一度取り戻す」が現代社会に必要とされているのかもしれない。職場において人間が働くポイントは「権限、自由、公平性」ということで、すべて「主体性」に収斂するものであるから。

いかに、実装するか。処方箋は書いてあるものの、個人レベルではなかなかハードルが高いのが忸怩たる思いを招く…とはいえ、組織開発を考えるのには非常に参考になる一冊だ。