世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】鴻上尚史「空気を読んでも従わない」

今年118冊目読了。劇団を率いる劇作家が、日本の生きづらさを読み解き、この日本をどう生きるべきかを提唱する一冊。


日本の特性として「村、つまり『世間』は、ちゃんと掟に従っている限り、ずっとあなたの面倒を見てくれた」「今、『世間』は中途半端に壊れた状態で残っている」「『世間』の人が、何か言ったり頼みごとをするのは、めぐりめぐれば、私のためだとみんな思っていた。『社会』の人は、自分の都合で頼みごとをしたり、文句を言う」とした上で「私達日本人は、自分と関係のある『世間』の人達とは簡単に交流するけれど、『社会』の人達とは、関わり方が分からない」「スマホは『世間』を見える化し、自意識をどんどん増大させる」と見抜く。


なぜ、そうなったか。「『世間』は、明治時代まで、一度も壊されることなく続いていたから。とても強力なものになった。もし、一度でも、日本人が異民族に支配されていたら、『世間』はうんと弱くなっていたか、なくなっていた可能性がある」と指摘。「『世間』はすでにあって、これからもずっと続くものと思われている。『世間』や、そして『社会』が思い通りにならない時は、日本人は『世間』や『社会』を変えようとするのではなく『しょうがない』という言葉でやり過ごす」と述べる。


では、その世間とは何か。「世間の5つのルールは、①年上がえらい②同じ時間を生きることが大切③贈り物が大切④仲間外れを作る⑤ミステリアス」と定義し「『世間』の5つのルールのうちどれかが欠けているものが『空気』になる」「一人一人より、まとまりを重視する」とする。


では、どうすればよいか。「『空気』に支配されそうになったら、『裸の王様作戦』を使う」「変わらない『世間』のルールをうまく使って戦う」「人に迷惑をかけない生き方を目指すのではなく、あなたと人が幸せになる生き方を目指す」「たったひとつの『世間』だけではなく、複数の弱い『世間』にも所属する。いつも一緒にいるグループだけではなく、たまに会う人達との関係も作っておく。それが、あなたの生き苦しさを救う」とする。


考え方、捉え方のフレームとして「さびしさが、少しでも減れば、『世間』から抜け出しやすくなる」「この国で、同調圧力に負けないでちゃんと生きていくためには、知恵をつけること。表面的な出来事に振り回されるのではなく、物事の本質を見つめることが大切」「自分の今の状況はたったひとつの正解ではないんだという考えは、生き苦しさから私たちを救ってくれる」「スマホの目的は『社会』とつながること」とみることを薦める姿勢は、非常に共感できる。


「私達は、感情に振り回されないために考える」「自分の人生を決めるのは、自分であって、『他の人がどう評価するか』ではない」は、重たい忠告だ。心したい。