世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【日大アメフト部問題:心理学の観点から。】

 心理学を少しばかりかじっている見地からも、この事件は示唆に富む。

《ポイント》
●人は「自分が見えるように他人も世の中を見る」と思い込む。
 人は、自分の脳が「すべてを適正に」認知していると思い込むが、実は「自分の見たい情報を取捨選択して」認知している。しかも、その取捨選択の際に、「価値観(信念、思い込み)」というフィルターがかかっている。部外者と広く関わっている人は、様々な「価値観」と触れるので、自分の認知の「ズレ」に気づきやすい。他方、均質な世界でしか生きていない人は、似た「価値観」としか触れないので、「自分の認知はまったくズレていない」と思い込みやすい。

●人は「過去の延長線上」でしか物事を見られない。
 さんざん叩かれている日大側であるが、一部報道では過去にも様々な批判をされている。その事実云々はここで論じる話ではないが、過去の報道が致命的ダメージにならなかったことから「マスコミは、騒いで叩きたいだけ。どうせ他の話題(=事件など)が起これば、そちらに向かっていって鎮静化する。だから、下手に会見などして批判にさらされ、マスコミの盛り上がりを作るくらいなら、ほったらかして、ほとぼりが冷めるのを待つのが正解」と「過去事例の延長線上」で今回の事象をとらえていたのではないか、とみる。

《問題の所在》
●自分の認知が世の中とずれていることに気づけていない。
 日大側の行動がことごとく「外して」いるのは、まさに「認知のズレ」によるものである。たぶん、会見の準備段階で大学関係者同士で話はしただろうが、なにぶん同質な人々での話なので「え、その認識はずれていないか?」という意識すら欠落しやすい(大学の体質などはここでは論じない)。
 一部報道で「悪いと思っているのか!?」という非難の声が出ているが、日大側は真剣に「いや、責任はあるって言ってるんだから、悪いと思っているさ。なんでそんな非難されるの?」と感じているように見える。学生を護る云々など、そもそも視界に入っていない。だから、何度切り口を変えて質問を受けても答えがかみ合わない。そしてぶちギレ司会者が誕生した(笑)。謝罪会見であのぶちギレもどうかと思うが、おそらく彼も真剣に「同じことばっかりじゃねぇか!」と思っていたのだろう。

 普段から多様な価値観に触れておくこと、そして過去の「成功体験」にしがみつかないこと。これは、日頃から意識していくしかなく、特効薬はない。

自戒の念を込めて。