今年137冊目読了。ルワンダ内紛で生き残った人々14人にインタビューをした衝撃の記録。
ルワンダ紛争末期に起こったおぞましいジェノサイド。もともと国民の84%がフツ、15%がツチ、1%がツワで構成されていたルワンダは、フランスが支援するフツ系政権と、ツチ難民からなるルワンダ愛国戦線との紛争だった。1994年4月のハビャリマナ大統領の飛行機撃墜事件が、過激派フツによる穏健派ツチへの大虐殺の引き金となってしまった。
大虐殺とは何か。「ジェノサイドは人間によって考え出された非人間的で狂気に満ちた計画であり、しかも非常に秩序だっているが故に、誰もが予想しえないプロジェクト」「戦争は知性と愚かさが原因であり、ジェノサイドは知性の喪失が原因」「ジェノサイドの原因は、一つ目は貧困と生活の必要性、二つ目は無知、三つ目は影響力のある人々と容易に影響される人々」「ジェノサイドは、二、三の根っこから成長した毒牙ではない。誰も気づかないうちに、土の中で腐って絡み合った根全体から成長したもの」という生存者たちの指摘は重い。
虐殺の中身はあまりにも惨酷すぎて、読んでもらうことを薦めたいが、「湿地では、重傷を負った者を見捨てることが、生き残るためのルール」「人間である私たちにとって生きたいという意志は、恐ろしいほどの根源的な欲求」「殺戮者たちが略奪や酒で馬鹿になったことが、私たちの命を救った」という過酷さは本当に胸が詰まる。
そして、未来に向けても「記憶は時間と共に変化する。しかし自分自身が体験した恐怖の瞬間はすべて、まるでたった今更起こった出来事のように覚えている」「自分たち生き残りは、この地球上のだれひとり信用できないのだ」「どこの誰が、私に優しさをくれるというのでしょう」「自分たちがジェノサイド以前と同じ人間であることが、まだ信じられない。ある面そうしないと、私たちは前を向くことができない」という影は拭い去れない。それは、生存者たちが「人間というものは一瞬にして、言い尽くせないほど残忍になり得る動物」「邪悪の根源に、彼らの貪欲さと冷酷さがあることだけは確かだ」ということに直面してしまったからだろう。
訳者の「生存者にとっての大きなショックは、親しくもあったフツの人々が、使い慣れた農具を持った殺人者に変わったことであった。したも、いつのまにか殺し方が、残忍でかつ大きな苦痛を与えるものへと変化していった点である」「殺しをゲームのように考えてしまっている。残忍よりさらに非人間的」「殺戮を始めた集団は、いつの間にか自己防衛という大義名分も忘れて、残虐性をとめどなく増し、非人間化していった」が、その恐ろしさを増大させる。
ナチスドイツの暴走・虐殺は決して過去のことではない。それをまざまざと見せつけられる。厳しいが、読むべき本だ。