世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】大野正人「失敗図鑑」

今年7冊目読了。文筆家の筆者が、過去の偉人たちの実例を紐解いて「すごい人ほどダメだった!」ということを解説する一冊。


子供向け(ルビが振ってある)だが、そのぶんイラストが多くて読みやすく、面白い。「偉人たちの失敗と、そこからどうやって復活したかを紹介する。失敗がいかに人生にとってすばらしいかを学んでくれ」というメッセージは、社会の荒波にもまれる社会人にこそ必要なのかもしれない。


ネタバレ回避のために詳細は伏せるが、その失敗の数々が非常に面白い。「グレる」「ひきこもる」「悪口を言う」「調子に乗る」「ナメられる」など子供のようなネタもあれば「成功にしがみつく」「人の意見が聞けない」「コンプレックスをかかえる」「ナイーブすぎた」「新しすぎた」「こだわりすぎる」などの社会人でもあるあるな失敗も数々。中には「ギャンブルにハマる」「いろいろ」とか、かなり興味深い。


しかし、どれもこれも、かなり含蓄に充ちている。「ひとつの成功から次の成功を作るには『分け与える』ことがポイント」「良い出会いにめぐまれるほど、人は大きく成長できる。では、どうすれば、人との出会いにめぐまれるか。それは、いろいろなタイプの人と友達になること」「大きくなりすぎたモヤモヤは、何か新しいことを始めて発散させる」「『ひとつの好きなことを、長くやり続ける』ことが、自分の『得意なこと』を作るためには大切」「すべての文化には、その文化だけがもつ美しさ、すばらしさがある。それを知ることは、自分の人生をより楽しく、豊かにしていくこと」あたりは、人生啓発本に出てきそうな中身だが、それが偉人の失敗と、軽妙なイラスト、語り口で書かれているので、かなりすんなり入ってくる。


逆境についても「大事なのは、にげた後、何をするか。まずは心を落ち着かせてから、しんけんに自分と向き合う」「失ったいばしょをいつまでも見つめたりせず、新しくいばしょを作る」「コンプレックスは成長のチャンス。もし、それを直したいと思うのなら、その部分から目をそらさず、一度、じっくりと見つめてみる」など、とても参考になる。


仕事をしていくうえでの教訓「自分が心から楽しめ、さらに人からみとめられるような仕事ができるかどうかは、たましいをもやす感覚をもっているかいないかで、大きく変わる」「結局、どんな仕事でも、人の心をつかんだ人が最後に勝つ」「どんなことでも笑って、楽しく、しんけんに。そうすれば、みんなもきっと、どんな失敗でものりこえられる」は、心に留めおきたい。


書きっぷりは子供向け、中身は大人向け。社会人経験を積んでからこそ、一読をお薦めしたい。