世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】東山紘久「プロカウンセラーの聞く技術」

今年116冊目読了。臨床心理学を専攻する京都大学大学院教授の筆者が、聞き上手は練習次第でなることができるとし、そのポイントを説く一冊。


「聞くことは理解すること。音や言葉を聞くことは簡単だが、相手を理解することは難しい」「人の話を聞くことは、聞き手にとって、話し手と弱点をどこかで共有すること」「聞くよりも話すほうが心理的に楽。人の話を集中しながら聞くと疲れる。だから、疲れているときに人の話を聞かなければならない時ほど大儀なことはない」という指摘は全くその通りだなぁと感じる。
そして、「聞き上手になるには、相手の気持ちを負担に感じず、こちらから話したくならない訓練が必要」「第一の修行は、相手の話を素直に聞くこと。相手に反論したいときも、話をよく聞いてあげると、相手の意見も自然と穏やかになり、反論しなくてもすむことのほうが多い」は、言うは易く行うは難し…うーん。


聞き上手になる心構えとしては「常に相手を理解しようと心がける」「話がはずむためには、相づちは肯定的であることが大切」「ぐちの聞き方は避雷針と同じ。自分にぐちを積極的に落としてもらう。そして自分の心の中にためこまず、そのまま地中へと吸収させる」「聞き手に関連することを、話し手が質問することはまずない」「興味のもてない話のときこそ、相手を理解するチャンス」「聞き上手になるためには、『いま、ここ』の感覚が大切」と指摘する。


聞き上手になるテクニックは「相手の話を聞くときには自分の意見を出さず、相手の話を肯定しながら聞く」「繰り返しの相づちは、明確に・短く・要点をつかんで・相手の使った言葉で」「聞き上手とは、LISTENすることで、ASKすることではない」「相手の話の内容より、どうしてその話をするのかということに関心を向ける」「相手から話を聞き出そうとしない」と述べる。


アドバイスをするにも「助言は相手の感情に訴えなければ意味がない。そのためには相手のことが個別にわかっていなければならない」「学びたいか、学びたくないかを決めるのは、頭ではなく当人の心」「心のケアには、教えてもらう態度が重要」「少し話を聞いてあげるだけで、元気になる人は案外多い」と忠告する。


子育てについての言及も「親が子供に教えてやったり、意見して聞かせたりすることのほとんどが、10歳くらいで終わる。それよりあとは、年に数回、知らないことを聞いてきたときや、知識がないために誤った行動をしているのを是正してやることぐらい」「あなたにとって大切な人は、あなたがいちばん忙しい仕事より自分のほうを愛してくれているかどうかを知りたい」あたりは唸らされる。


その他にも「悪口は精神の浄化作用。自分と関係させずに言ったり、聞いたりできると、自然の浄化作用が働く」「人間の心は自分に都合よく働くようにできている」「日常生活と晴れの日のケジメのなさは、心と物質、現実と非現実の境界も曖昧にしている。大人と子どもの世代の境界のあいまいさ、ケジメのなさが、子どもの問題を多発させている」など、人間関係について非常に参考になる。


「成長とは『独居して孤独にならず』だが、なかなか難しいこと」…まさに然り。だが、この心構え、大事にしたい。