世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】中尾隆一郎「自分で考えて動く社員が育つOJTマネジメント」

今年11冊目読了。株式会社中尾マネジメント研究所代表取締役社長にして、リクルートグループで数々のマネジメントを行ってきた筆者が、1on1、グループコーチング、AIツールを活用した最新型のOJTの手法を徹底解説する一冊。


学びを同じくする畏友が薦めてくれたので読んでみたが、これはなるほど洞察が深く、かつ実践的だ。


最新型G-POPマネジメントというものを提唱されると身構えてしまうが「イケてる現場のリーダーがやっているOJTを、便利なITツールやテクノロジーを活用することでいろいろな職場で活用できるようにしたメソッド」と言われると、少しハードルが下がる。


現在のOJTの問題は「計画的でないため、現場で何をしているか分からない」。その進化版として、マネジャーが部下の育成を目的として行う個人面談である1on1については「時間問題、相性問題、能力問題、形骸化問題がある」と指摘する。また、集合研修についても「受講者は一律でないのに、一律のコンテンツを習得させる。また、効果が不明確」と、その違和感を突く。


職場リーダーには、歩き回りながら声をかけていくウォークアラウンドを薦める。「①現状把握:定期的に職場で起こっている変化を把握する②解釈:様々な事実・経験・勘を組み合わせて解釈する③介入:変化が起きている人に対して声をかける」は、言葉は違えど、自身でも意識していることであり、納得性が高い。また、メンバーの段取り力を高めるには「①仕事を依頼する②30分間メンバーに仕事の段取りを考えてもらう③30分後にメンバーと仕事の段取りを確認する(30分間)④最後にアドバイス・指示を行う」は、まったく意識もしなければやったこともないので、取り組んでみたい。
さらに、グループコーチングとして「①瞑想で心をフラットにする②チェックインで、『24時間以内にあったありがたい話』をすることで場をポジティブにする③G-POPフォーマットに記入すること自体でセルフコーチングをする④それぞれのメンバーが状況報告し、すべての参加者が平等に話を聞いてもらう機会を作る⑤それに対してメンバーが感じたことを共有し、『感想の交換』を行い、感じたことを率直に話せる⑥チェックアウトで感謝と気付きを伝えることができる」とする。これは最前線ではなかなか難しいが、手法として頭の片隅に置いておきたい。


G-POPマネジメントとは何か。ハイパフォーマーの仕事の「①常にGoal(ゴール)を意識し②Pre(事前準備)に時間を使い③現場で相互アドバイスしながら機敏にOn(実行・修正)し④実行後のPost(振り返り)から学び、成功の再現性を高める」からきている。「成果が出る人と出ない人の差は『成果が出る仕事の進め方』が『習慣』になっているかどうか。組織も同じ」との主張は、なるほど納得だ。


自律自転する組織の条件「①現場の見える化ナレッジマネジメント③メンバーの特徴把握④メンバーの『仕事の進め方のスキルアップ』実現⑤(結果として)最適な人材発掘、人材配置、人材育成、人災採用の実行」であったり、タスクがうまくいかなかったときの観点として挙げる「①時間の見積もりの仕方を変える②視点を変える③視座を高める」は、わかりやすい。


最後のほうのAIを使った技法については、正直、体感を伴わないので何とも言えない。が、「ゴールに関連する業務をすればするほど、そのゴールに近づくはず。ところが、常日頃、ゴールを意識せずに目の前の仕事だけに集中している人が少なくない」「本人たちがやりたいことをやっているときに、最大の成果が出る」「『弱み』や『悪さ』を指摘しても、その人が変わることはきわめて稀。本当の意味で『変わる』のは、その人自身が『変わりたい』と思った時だけ」「振り返りを仕組み化している人・組織、つまり『学習する人・組織』こそが、進化しやすい人・組織」などの指摘は非常に共感できるし、それが明確に言語化されているのがありがたい。


畏友が薦めてくれただけあって、本当に参考にできそうだ。ぜひ、一読をお薦めしたい。