世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】柳澤桂子「生きて死ぬ智慧」

今年72冊目読了。お茶の水女子大学名誉博士生命科学者にして歌人であり、原因不明の難病に苦しみ続けた著者が、般若心経を科学的解釈で美しい現代語に心訳し、堀文子の挿絵とともにいのちの意味に迫る一冊。


端的にいうと「般若心経の現代訳」なのだが、心の真理、世の真理に迫る感覚は独特なものがある。


「もし あなたが 目も見えず 耳も聞こえず 味わうこともできず 触覚もなかったら あなたは 自分の存在を どのように感じるでしょうか これが『空』の感覚です」
「変化しない実体というものはありません 実体がないからこそ 形をつくれるのです 実体がなくて 変化するからこそ 物質であることができるのです」
「私たちが あらゆるものを 『空』とするために 削り取り 削り取ったことさえも削り取るとき 私たちは深い理性をもち 『空』なる知恵を身につけたものになれるのです」
「行くものよ 行くものよ 彼岸に行くものよ さとりよ 幸あれ」


 …など、心に染みるようで、いまいち掴み切れていないのは、自分の感覚がまだまだ深まっていないからだろう。読み手の苦悩、懊悩、絶望と、そこに向き合う勇気が、この本の本当の意味を浮かび上がらせるカギになると感じる。


 「宇宙の真実に目覚めた人は、物事に執着するということがなくなり、何事も淡々と受け容れることができるようになります」というあとがきの言葉を引くまでもなく、ほんとうに「目覚めた」世界というものを垣間見ることができる。


挿絵も含め、頭で追うのではなく、心で感じ取る一冊。自分は、まだまだ心の陶冶が足りない(いや、そもそも足りないという感覚の時点でズレているようにも感じる)ということだろう。本当の苦境の時にこそ、読むべき一冊なのかもしれない。

【読了】梶谷真司「考えるとはどういうことか」

今年71冊目読了。東京大学大学院総合文化研究科教授の筆者が、0歳から100歳までの哲学入門を説く一冊。


哲学入門、としつつ、その中身は「集まった人々がフラットに対話を深めていく」という『哲学対話』を対象としている。


哲学について「世間から見れば、哲学というのはごく限られた物好きや変人がやる怪しげな所業に過ぎない」と、まず客観視する。そして、哲学がやや(かなり?)斜めに見られることについて「家庭でも学校でも会社でも、私たちはその場にふさわしいこと、許容されそうなことだけを言う。そうでないことを言うのは、明に暗に禁じられてきたか、自ら控えてきたかだろう」「現実の生活の中では、考える事由がほとんど許容されていないからであり、しかもそれは、まさに考えることを許さない、考えないように仕向ける力が世の中のいたるところに働いているから」と説く。結果として「ダイジョウブ、何も質問がない、というのは、『何も考えていません』『何も考えることはありません』『考えるのは面倒くさいです』『考えるのはやめました』」という状況に堕してしまう。


そして、哲学の本質を「『問い、考え、語ること』『分からないことを増やすこと』」と定義する。そのうえで「自由と多様性が思考に深みと広がりを与える」「思考は、論理的で一貫性がないといけない。だがそれだけではなく、他人や物事に対してのみならず、自分自身に対しても批判的・反省的でなければならない。柔軟で自由でなければならず、バランスや公平さも必要である」と述べる。


問うことの重要性も、実に興味深い。「問いは思考を動かし、方向付ける。だから、考えるためには問わなければならない。重要なのは、何をどのように問うかである」「ところが日常生活において、人に問いかけるというのは、きわめて難しい。誰かが質問するときは、怒っていることが多い」「問う方法がわかれば、考えることができる」「自分にとっての問いの意味を問う」「知識はそこからさらに問うてこそ意味があり、問いは知識によってさらに発展する」など、なるほどなぁと考えさせられる。


生きていくうえで留意すべきこととしては「人間は自ら考えて決めたことにしか責任はとれないし、自分の人生には自分しか責任はとれない」「自分でつまづいて自分で考えたことしか、その人のものにはならない」「聞くことにおいて本質的なことは、音声となった言葉を受け止める以前に、その人のためにその場にいて、その人の存在をそのまま受け止めること」など、心に響く。


全ての基礎をなしているのは「みんな考えることが好きなんだ。考えることって楽しいんだ」という著者の言及のとおり。逆に言えば、考えないということは「人間である」ことを放棄しているようなものだ。日々、惰性で生きている自分を戒めないと…


新書だといって侮ると、大変。文章も非常に平易だが、その中身はぶ厚く、しっかりと読み込むことで理解を深める本だ。もっと言えば、思考の実践を通じながら、「体得していく」本のようにも感じる。著者も「自分がものを考えている時の身体感覚に敏感になった。思考が深まる時、広がる時、行き詰まる時、それぞれ特有の感覚がある」と言及しているし。ぜひ、一読をお勧めしたいし、一度は「哲学対話」に参加してみたい、と思わされる本。

【読了】イリス・ボネット「ワークデザイン」

今年70冊目読了。ハーバード大学ケネディ行政大学院教授の筆者が、行動経済学ジェンダー格差を克服することを提唱する一冊。


人間の行動特性として「バイアスは、私たちの頭の中に根を張っているだけでなく、制度や慣行にも根を張っている」「人は誰しもバイアスと無縁ではない」「人は他人のバイアスにはすぐに気づくが、自分のバイアスは見落とす」「人は、頻繁に、そして多くの場合は自分でも気づかずに間違いを犯す」「人はある個人について判断するとき、その人物が属する集団の平均を基準に考える」「人は、過去の成功パターン、慣習、業界の規範などに照らして、自分のおこなっていることを理解しているつもりでいるが、エビデンスを検討しなければ真実はわからない」「人は一貫した講堂を取りたがる性質があるため、自分がすでにもっているバイアスのままに判断をくだしがち」と述べる。


女性が生き生きと活躍できない背景について「女性たちが能力と好感度のトレードオフに直面している」「文化において好ましいとされる資質は、男性のステレオタイプと結びついている場合が多い」「女性は、男性より曖昧さを避けたがり、しかも自信がない。推測で答えないだけでなく、積極的に発言したり、意見を述べたりもしない」と指摘する。


では、ジェンダー平等のためにどう取り組むべきか。筆者は「理性的な判断を促すために、『反対を考える』『自分の内部の集合知を活用する』といった戦略の訓練を積ませる」「女性に発言や交渉を促す。特に、他人のために交渉するよう促す」「クオータ制で女性がリーダーシップを振るう姿を見せて、女性の自信を強める」「ランキングをうまく活用して、人や組織が互いに競い合いながらジェンダーの平等を高めるように促す」「さまざまな視点と専門性の持ち主が互いに補完し合えるように、突出した能力はもっていなくても多様なメンバーを集める」「情報は、目につきやすく、わかりやすく、比較対象を示すようにする」と提言する。


行動デザインの有用性について「DESIGN、即ちD(data、データ)、E(experiment、実験)、SIGN(signpost、標識)」「研修は能力構築へ、人材マネジメントは直感きらデータと仕組み作りへ、競争の環境は不平等なものから平等なものへ、ダイバーシティひ数合わせから成功の条件づくりへ」と述べ、このあたりは納得できる。


最初は、行動の気づかないバイアスなどを細かく実例入りで紹介しており、とても興味深いと思って読み込んだ。しかし、「じゃ、どうすればいいの?」という肝心な部分に入っていくと、いきなり「当然だし、誰も反論できないけど、取り組むのが難しい」事ばかり提唱され、一気に読む気が萎えて、拾い読みになってしまった。期待外れ感まんまん。これ読むなら、中原淳「女性の視点で見直す人材育成」の方がよほど実践的だ。


一点、「娘がいる男性はジェンダーの平等を重んじる傾向がある」については、実に納得。でも、解決を求めるのであれば、お勧めできない。あくまでバイアスの罠を知る参考書止まり、だな。

【読了】ロバート・フリッツ「偉大な組織の最小抵抗経路」

今年69冊目読了。ロバート・フリッツ・インク社の創立者にして、創り出すプロセスの領域から組織、ビジネス、マネジメントで個人の生産性向上に取り組んでいる著者が、リーダーのための組織デザイン法則をまとめた一冊。


ぶ厚い本で、その中身も実に重厚。「最も大切なことは、人も組織も、社会や経済のシステムも、ほとんど何から何まで構造によって支配されている」「現場で見失われていることが多いリーダーシップの特質は、矛盾するプレッシャーの中で、はっきりと態度を表明し、組織にとって最も重要な価値と志を大事にする能力」と述べ「最小抵抗経路の基本原則として、1)エネルギーは、最小抵抗経路に沿って進む。2)根底にある構造が、最小抵抗経路を決める。3)私たちは、新しい構造を創り出すことによって、最小抵抗経路を決められる」と洞察している。


読み始めたときには、なかなか理解ができなかったのだが、「緊張解消システムが単純な場合は、緊張構造が生じる。ところが、ふたつの競合する目標をめぐってふたつの緊張解消システムが存在すると、事態は複雑となり、葛藤構造が生じる」「構造は、競合する目標の間に均衡をつくり出そうとする。一方の目標に近づくと、構造は均衡を取り戻すために、自動的に他方の目標へと向かう。そうやって揺り戻しが起こる」「葛藤構造においては、望みを満たすことが最大の不均衡状態を生み出す。緊張状態においては、望みを満たすことで均衡状態を生み出す」「自分の組織における揺り戻し事例を観察することによって、競合する緊張解消システムが形成する葛藤構造を認識できるようになっていく」のあたりの記述で、ようやく理解できた。
ふたつの相反する目標が、どちらかを推進しようとすると、反撥する力を出すことによって、バランスしてしまい、前に進めなくなってしまう。競合する目標を「目標と手段」という形に整理する(踏ん切りをつける)ことによって、バランスの罠を脱する、ということだ。これ、ゴムで右の目標と左の目標から引っ張られている、という例えをしたイラストがイメージしやすい。どっちに行こうとしても、逆のゴムがバランスさせようとしてしまい、どちらかに寄りつけない。まさに、立ち往生の状態であり、確かに組織にとって大きな罠だと痛感する。


そもそも「構造とその力学を使えることこそが、組織の変革を長期的成功にしていくために必須の力」としたうえで、組織構造の法則として「1)組織は揺り戻すか、あるいは前進する。2)揺り戻す組織では成功は相殺され、前進する組織では成功が長続きする。3)組織の構造が変わらないと、組織の行動は元に戻っていく。4)組織構造を変えれば組織行動は変わる。5)組織を緊張構造が支配するとき、組織は前進する。6)組織を葛藤構造が支配するとき、組織的な揺り戻しが起こる。7)組織構造が不適切な場合、直すことはできない。その代わり、適切な構造に移行できる。8)上位の組織化原則が不在だと、組織は揺り戻す。上位の組織化原則が支配すれば、組織は前進する9)組織の支配的な価値は、競合する他の小さな価値を追い払う」とする。正直、これはかなり目から鱗だ。システム思考なども少しかじってはいるものの、ここまでズバリと述べられるとインパクトが大きい。


組織の特性については「不均衡状態が構造に内在すると、構造は均衡を取り戻そうとする」「ぶら下がった目標には、上位目標を支える戦略的な役割がある。目標間のつながりが最小抵抗経路を形成する」「本物の緊張構造を確立するためには、目標に対する現在のリアリティを正確に知り、表現する必要がある」「創造志向になると、私たちは従来の計画プロセスを離れて、緊張構造によって前進する勢いを得られる」「構造アプローチには空間的な思考が必要となる。通常の直線的思考ではなく、複数の単位で思考する」と指摘する。


リーダーに求められることは「どんなにスピードが求められ、プレッシャーがかかっても、一瞬立ち止まって、自分は何を求めているのか、自分はいまどこにいるのかを自問自答する」「自社のサービスを購入しようと顧客を動機づけるものは何かを問う」「コミュニケーションによって、目標、志、価値、社会規範、仕事をともにする経験、将来への希望、人の心を調和させる」「できるだけ引き継ぎを少なくし、手順を少なくする」「1)望む成果を定義する2)今のリアリティを分析する3)プロセスをデザインする4)新しいプロセスを実行する」「必要なものは、真のビジョン、真のビジネス戦略、作業量と生産能力についての真の理解、真の決意、緊張構造の共有、強靭な人格」とする。


一般則として心に留めたいことも多い。「顧客は、付加価値で購買を決めたりなどしない。価値そのもので決めるのだ」「優れた戦略は固定的なものではなく、生き生きとしたダイナミックなもの」「偉大な組織は、リアルな価値とリアルな夢を持っている」「組織の統制は、統一指針×実務能力×リーダーシップの掛け算で生まれる」など、素晴らしい指摘。


同じ中心軸を、あらゆる切り口から繰り返し述べている、ようにも見える。しかし、その分、非常に骨太な筆者の信念を感じるし、それによって見えなかったものが見えてくる体感アリ。なかなか手強い一冊だが、その労を費やして読むだけの価値は十分にある。いや、寧ろ定期的に読み込むべきなのかもしれない。良書だ。

【読了】山本太郎「感染症と文明」

今年68冊目読了。長崎大学熱帯医学研究所教授にして、アフリカやハイチなどで感染症対策に従事した筆者が、感染症との戦いの行方は共生しかないのではないか、と提言する一冊。


2011年に執筆されているが、コロナ禍真っただ中の2020年にこそ読みごたえがあるといえる。もちろん、感染症がすぐそこに存在するという世の中の苦しさを痛感している中では「根絶してくれよ…」と思う。しかし、著者は無情にも「根絶は根本的な解決策とはなりえない。病原体との共生が必要だ。理想的な適応を意味するものではなく、私たち人類にとって決して心地よいものでないとしても」とバッサリと述べる。


感染症の特性としては「急性感染症は隔離された小規模な人口集団では流行を維持できない」「定住地において、人々が排泄する糞便は、居住地の周囲に集積される。それによって寄生虫の感染環が確立する」「感染症と文明には基本構造がある。文明は感染症のゆりかごとして機能する。文明のなかで育まれた感染症は、生物学的障壁として文明を保護する役割を担う。文明は、文明の拡大を通して周辺の感染症を取り込み、自らの疾病レパートリーを増大させる。疾病の存在が社会のあり方に影響を与える」と斬り込む。


歴史的な疫病のポイントとしては「11世紀から14世紀にかけ、ユーラシア大陸の両端に位置する中国とヨーロッパで人口が急増した。また、大陸を結ぶ交通網がキリスト紀元の頃とは異なる規模で発達したことで、ペストが大流行した」「旧世界と新世界の接触は、感染症をもつものともたざるものの遭遇」「第一次大戦で、アフリカにおける列強の代理戦争がインフルエンザ拡大の土壌を提供し、植民地経営の屋台骨を支えた鉄道がインフルエンザを運んだ」と指摘する。


現状については「交通の発達と人口の増加は、いつの時代においても疫学的平衡に対する最大の攪乱要因」「開発が環境改変を目的とする限り、開発がどのようなものであれ、疫学的均衡はある種の攪乱を受ける。その結果、社会の疾病構造は良くも悪くも変化する」としたうえで、今後について「感染症のない社会を作ろうとする努力は、すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためには、共生の考え方が必要になる。重要なことは、いつの時代においても、達成された適応は、決して心地よいとはいえない妥協の産物で、どんな適応も完全で最終的なものでありえないということを理解することだろう。心地よい適応は、次の悲劇の始まりに過ぎないのだから」と明言されると、本当に暗澹たる気持ちになる。


しかし、考えてみると、自然を打ち破ろうという人類の傲慢な姿勢が現状を招いたとも考えられる。結局、現状を受け入れ、適応しながら前を向くしかないのだろう。ここで留意すべきは「諦める」のではなく「適応する」という心構えだと思う。筆者が述べているとおり「助かるはずもないという諦めが、無気力と抑うつをもたらし、しばしば、人間を死に至らしめる」のだから。適応しても、何をしても、命あっての物種。そう感じさせてくれる。コロナ禍で、必読の一冊といえる。

【読了】吉原英樹「バカなとなるほど」

今年67冊目読了。神戸大学名誉教授の著者が、企業研究に基づいて発見した経営成功の決め手について述べた一冊。


ネタとなる企業はバブル期の原稿であるため、女性活用や海外進出など、違和感がある。しかし、その軸となる主張「成功している企業の多くが、一見して非合理だが、よくよく見ると合理的な戦略を実行している」は、今なお新鮮なインパクトがある。


タイトルの意図として「成功するには、差別性と合理性。バカな、といわれるくらい他社と違う戦略と、なるほどと納得できること」「他社が軽蔑し、バカにする戦略の場合は、実際に成功するのをみてからでないと、他社はまねをして参入してこない。その間に、創業者利益をあげることができる」と説明する。


失敗する道としては「自分都合主義と保守主義のべき論の立場から議論していては時代の流れに乗れず、敗れ去る運命にある」「組織慣性を生む一つの要因は、忠誠心ないし一体感。人間はあることにある期間従事すると、そのうちにそのものに一体感を抱くようになり、そのものを変えられることに抵抗するようになる」「一社独占の状態が長く続く成熟商品の場合、独占の慣れから品質向上は緩慢で、サービスも悪く、価格も高位安定にあることが多いので、ユーザーひ不満が鬱積し、新規参入を待望する気運が生まれる」と言及する。


また、戦略を考える際に留意すべきこととして「新しい戦略を打ち出したとき、他社からバカよばわりされたり、軽蔑されたら、内心、しめたと思っていただきたい」「落差利用の戦略発想法の一つは、外国と日本のあいだの差に注目する」「まず何よりも外への関心をもちつづける」「先見力を強めるため、べき論にたたずに予測論になって世の中の変化、時代の流れを読む努力をする」「戦略の伝達方法は、口頭、文書、人事、予算、組織、日常の言動」と述べる。


陳腐な部分を捨て、メッセージの趣旨を拾えば、なかなかの良書。「情報は情けに報いてくれるもの、つまり、人間的、心理的、情緒的なもの」「継続は悪、変化は善」「他人に頼っていては勉強にならない。自分でやってみてはじめて身につく。できるだけ多く、かつ早くさまざまなことを経験してみる」は、今後留意していきたい。

【読了】瀧本哲史「武器としての決断思考」

今年66冊目読了。京都大学客員教授、エンジェル投資家の筆者が、学生に教えた意思決定の授業を本に凝縮した一冊。


読書会で勧められたので読んでみたが、まぁ整理されていてわかりやすい。楽しみながら読み進めることができた。


変化の21世紀を生きるために「自分にとって必要な学問は何かと考え、探し、選びとる」「武器は使ってこそ。教養も、座学ではなく、実践により磨かれる」「日頃から、知識を判断、判断を行動に繋げる意識を強く持つ」「判断を左右し、行動を変える情報や知識こそ最重要」と提言する。


人間の陥りやすい特性として「人の認識や意思決定はゆがみやすい」「先送りというのは一見、決断を先送りしただけのように捉えがちだが、実のところは『決断しないという大きな決断』をしたことに他ならない」「ブレない生き方は、ヘタをすれば思考停止の生き方」に触れ、注意を促している。


心すべきは「これからの時代における最大のリスクは、変化に対応できないこと」「原因と結果のどちらが時間的に先行しているかを常にチェックする」「賛成の意見と反対の意見を敵とにばらまいて、議論の収拾をつかなくし、現状を存続させる方向にもっていくのは、情報コントロールの基本中の基本」「価値観や哲学の問題には、自分自身で決着をつけるしかない」「どんなに困難な状況、困難な時代にあったとしても、前を向いて歩いていくしかない」とする。


著者はディベートの重要性を強調しているので、ディベートについての言及も多い。「ディベートは、根拠が8割、根拠が命」「大きな問題は、小分けにし、同時に2つか3つの議論すべき論題について考える」「正しい主張の3条件、主張に根拠がある、根拠が反論にさらされている、根拠が反論に耐えた」「判定は、質×量×確率で考える」などは、日常においても参考になる。


情報整理についても「推論の部分は相手も無意識に言っていることが多いので、そこに対して重点的にツッコミを入れる」「マスメディアの報道とは逆の意見を集める」「原典にあたることを習慣にすると、他者より一段上の意見を言える」あたりは、今すぐ取り組みたい。


著者の主張がわかりやすく整理されており、これは新書ながら読み応え抜群。「読書とは格闘技。さらっと読んで終わりにするのではなく、著者の言っていることを1ページ1ページ、咀嚼しながら読む」は耳が痛いが、ぜひ、一読をお勧めしたい。