今年83冊目読了。小児精神科医にして、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長の筆者が、感情とうまく付き合い、日々をおだやかにすることを提唱する一冊。
ライトな雰囲気で、中身はけっこう深い。読みやすさでスルスル読み進めると、大事なことを見落とすほどだ。
筆者は、感情の再評価の必要性を強調する。「ネガティブな感情が生じたときに、立ち止まってその状況や感情を整理し、捉えなおしてみる。感情が大爆発したり、心がペシャンコになったりしないように、少し方向転換させる」は、確かに仰るとおり。
感情は「瞬時に状況を評価してくれる優れもの。自分自身が死なないため、子孫を残すためにプラスになることにはポジティブな感情がわき、生存・生殖を脅かすものにはネガティブな感情が湧くようになっている」。が、「いまの社会では『生存』にかかわる危機に遭遇することはほとんどないのに、感情は、狩猟採集をして洞窟に住んでいた時代と同じように『短期的に生存・生殖にとって好ましいかどうか』を評価してしまう」「生存のために進化の過程で備わった機能だから、感情は勝手に湧き上がってくる。だからこそ、いまの状況について感情が下した評価を、改めてそれが正しいものなのかどうか、再評価する必要がある」も、自分の体感とピッタリ合う。
大事なのは「逃走か、闘争かのどちらかしかないわけではなく、『働きかける』という第三の道もある」を認識できるかどうか、ということなんだよな。
筆者は、モニタリングの重要性を提唱。「まず、自分の感情に気づき、じっと見つめてモニターしてみる。ネガディブな感情がわいてきたら、それはモニタリングのチャンス」「モニタリングのステップは①自分の感情に気づく②感情を言葉にする③感情の背景を分析する④行動する」とする。
モニタリングで心掛けることとしては「①自分の気持ちを感じ取って言葉にする習慣づけ②自分がどんなときにどんな感情になりやすいか傾向をつかんでおく③自分の感情を捻じ曲げたり、ふたをしてしまうような『考え方の癖』に気づく」。そして、モニタリングを行ううえでの大事な心がけのカギが「『自尊心』と『オーナーシップ』」「たいせつなのは、いくつもの軸を持つことで、そう簡単には崩れなくなる」「自分の選択で、自分の判断で、自分の責任で、というオーナーシップが生まれた瞬間に、これまでとは違ったモチベーションがわいてくる」「ただし、オーナーシップを持ちつつ、自分で背負い込みすぎないように、バランスを大切に考える」などを挙げる。
セルフケアのために、いくつもの提案をしてくれている。心の持ち方は「セルフラブ、利他、人気はその人の勝ちではない、『つながり』に意識を向ける」。思考法は「嫌なものは避ける、不安な時は現実的に考える、できないことを線引きする、成功体験を応援ツールにする」。行動は「深呼吸する、大きなタスクはバラす、短時間の休みを作る、好きなものに囲まれる、体を動かす、誰かと話す、ネガティブ話者に主導権を渡さない、気持ちをノートに書き出してみる、得意なことを積極的にする、15分間何もしない、応援してくれる人を探す、食べておく・寝ておく」あたりは意識したい。
ネガティブな感情の癖として「ゼロヒャク思考、過度な一般化、ネガティブだけを見る、良いところを認めない、論理の飛躍、個人の問題化、『すべき』『あるべき』思考、拡大解釈&過小評価、感情的な理由づけ」も、気をつけたいところ。
読みやすいので、ぜひ、一読をお勧めしたい。