世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】上村信太郎「知られざる富士山」

今年57冊目読了。日本山書の会会員のライターである筆者が、富士山にまつわる秘話、逸話、不思議な話をまとめた一冊。


深い本ではないし、一項目が小分けなので、ライトに読めて、ちょいと面白い、というテイスト。


日本人の富士山好きについて「富士を別の字であらわしたものには、不二、布二、不死、不自、不時、富地、富慈、富児、福地、降士、不地、富池、富智、風詩、婦尽、不尽などがある」「『富士隠し』とは富士の眺望をさえぎる山を呼んだ言葉だが、そんな言葉が生まれるということは、わたしたちが、よほど富士山を見ることが好きな国民だからだろう」との記述は、なるほどなぁと思う。


自分が知らなかった豆知識としては「毎年7月1日は富士山の山開き日と決められている。元々、各登山口の富士浅間神社には俗人の信徒が結成する富士講がつくられた。この信徒たちにかぎり、旧暦の6月朔日から7月27日までだけは登山し、山頂に祀られた神仏を拝することが許され、神社の山門の扉が開かれた。明治以降、新暦になると1か月遅れの7月1日に改められた」「室町時代、富士山にも金山があった記録が残されている。その後、金が採れなくなったので閉山した」「富嶽三十六景は、あまりにも人気が高かったので『裏不二』として10枚追加され、三十六景とはいうものの実は四十六景」「浅間神社が東関東に集中しているのは、富士山噴火による火山灰の被害にあった地域だからではないか。昔の人は、美しい富士山が見えたから浅間神社を祀ったとは考えられない。農作物が豊作であることを願い、その作物への降灰による被害を何より恐れたからであろう」のあたりが結構驚きだ。こういうのは、書籍でないと得られない情報だ。


筆者も色々と富士山を礼賛するが、やはり先人達の巧みな言葉には敵わない。横山大観「富士の美しさは季節も時間もえらばぬ。春夏秋冬、朝昼晩、富士はその時々で姿を変えるが、いついかなる時でも美しい。いわば無窮の姿だからだ。私の芸術もこの無窮を追う」深田久弥「一夏に数万の登山者のあることも世界一だろう。老いも若きも、男も女も、あらゆる階級、あらゆる職業の人々が、『一度は富士山を』、と志す。これほど民衆的な山も稀である。というより国民的な山なのである」は、確かに味わい深い。


本筋とは違うが、冒険スキーヤー三浦雄一郎の言葉がなかなか染みる。「どうせ人間は一度しか死なないものなら自分の一生を雄大なものに賭けよう。自分なりに正しいと信じたときには、それに命をかけてやり抜く勇気と、それをやりくりする知恵と、やりとげる力を身につけたいものだ」は、アラフィフのサラリーマンには重過ぎる…とはいえ、今の自分に何ができるか。考えさせられる…