世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」

今年119冊目読了。アイルランド出身の劇作家・小説家の筆者による、現代演劇最大の傑作、あるいは問題作とされる一冊。


一度は読んでみたい、と思っていたが、確かにこれはよくわからない。なんでこれが傑作と呼ばれるのだろうか…


気になったフレーズは「いろいろな人に会えるというのは、実に幸福だ。ごくつまらん人間でも、なにか教えられる。それだけ心が豊かになる。自分の幸福をよりよく味わえるわけだ」「世界の涙の総量は不変だ。誰か一人が泣きだすたびに、どこかで、だれかが泣き止んでいる。笑いについても同様だ。だから、今どきの世の中の悪口を言うのはやめよう。昔より特に今のほうが不幸だというわけじゃないんだから」のあたり。


訳者のあとがき「まことに全篇矛盾だらけ、隙間だらけである」「ディディたちがしゃべるのは『考えないため』であり、また空中に満ちている『声たち』を『聞かないため』である。人物たちの会話は、非連続(コミュニケーション・ギャップ)に満ちている」「それにしても、演ずべき『物語』がないではないか。(中略)演ずべきことのない、この手持ちぶさたと不安感は、しかし、えも言われぬ自由な浮遊感を与えてくれはしないか」「『ゴドーを待つ』という、あるようなないような枠組(大いなる物語)は、過去と未来のあいだに宙づりにされたこの現在あるいは現代の瞬間を生き生きとさせるための仕掛けにすぎないのかもしれない」で、なんとなくモヤモヤが見えてきたような気がする。


この本の真髄は「よくわからないものを、よくわからないままに受け入れる」という、意味づけが大好きな人間という生き物に対する挑戦、なのかもしれない。