世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】勝間和代「読書進化論」

今年116冊目読了。経済評論家、公認会計士の筆者が、「人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」について考察する一冊。

端的に言って、駄本。第一章「人を進化させる読書がある」は、非常に共感しながら読めた。しかし、第二章以下はダメだ。ひたすら筆者の成功自慢と、それを賛美する書店員、カツマーのコメント。「断る力」では、筆者の失敗と、そこからの突破が描かれていて面白かったが、この本は全く面白くない。いみじくも、この本の記述「本はある意味、著書の与太話。面白い与太話と、つまらない与太話がある」の、まさにつまらない与太話。

「インターネットも本も、著書の頭から出てきたコンテンツを共有している」「本のほうがインターネットより優れている点は、有料のために市場原理が働きやすいので、コンテンツやその制作者が質に応じて淘汰されやすくなる。また、第三者による編集という手間暇がかかっているぶん、インターネットよりまとまって、きれいに整頓されている傾向がある」「本はウェブよりも濃度が高く、時間の費用対効果がいい」という分析は、至当。また、「読んだ本の成果は仕事や生活で活用しなければならない」「本を読むことは著書の体験を、読者が疑似体験すること」「本を読むとか、人と会話をする、というのは相手から刺激を受けて、自分のデータベースの構造を組み立て直す作業」など、いいことを言っているだけに、惜しい。

…そして。この人の文章はなんか読みにくい、と感じていたのだが、読み返してみると「読点(、)の打ち方が適切でないので、係り結びがねじれて見える」からだとわかった。筆者が指摘する『本とインターネットの違い』に、「インターネットは読み流されるが、本は通読されやすいので、より適切な言語の使い方が求められる」を個人的に追加しよう(笑)。