今年41冊目読了。冒険小説の定番中の定番であり、さまざまな形でのリメイクもされている海洋冒険小説。
主人公が子供であるためか、子供向けとされてしまっており、またドラえもん映画2018でもモチーフとされている。もちろん、娯楽小説、ご都合主義と感じられる部分もそれなりにあるのだが、人間描写は非常に鋭く、とうてい子供向けとはいえない。特に、強烈なインパクトを残す海賊、ジョン・シルヴァーの狡知にたけた考えと、それを具現化すべくクルクルと対応姿勢を変える技法は、空恐ろしいをこえて感動的なレベルだ。
子供向けであれば「勧善懲悪」となってしまい、細かな心理描写などは抜け落ちがちだが、もちろん、この名作にそんなことはなく、むしろ緻密な観察がなせる描写が多い。子供向け「宝島」と、本来の「宝島」には、ロボットアニメにおける「鉄人28号」と「ガンダム」の格差くらいの世界観の視座の差がある。
単調な日常に疲れてしまった大人(といっても、実はどんな人生であっても、それなりに波乱万丈あるのだが)にこそ、未知へのワクワクと挑戦意欲を取り戻すべく、読んでもらいたい。そこにあるのは全く子供だましではない世界だ。