今年3冊目読了。日本学術振興会特別研究員にして、国立民族博物館外来研究員の筆者が、イタリア精神医療の人類学について書き記した一冊。
〈お薦め対象〉
精神および組織の断絶に関心のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆
自分の問いは3つ。
『病気、特に精神病とは何か?』には「人間的主体であるというところに狂気があり、それを恐れて精神医学は『精神疾患』という概念に閉じ込める。精神病者の保護と治療を目的としつつ、社会の保護が第一目的。精神病を解放するものは、主人公であること、自覚、可能性」。
『人間の意識の特性は?』には「自分という存在が認められると、想像もしなかったような結果をもたらす。人はそんなに簡単に恐れや偏見から解放されない。自分の行為が因果関係を引き起こせるという効力感の発見が、能動的主体になれることの発見につながる」。
『我々は何を意識すべきか?』には「自分に確かな技術がないという孤独を深く自覚することこそ、新たな可能性を開く。年月の中で無用なものを取り除いていくと、その時に応じておのずと行動するようになる。諸々の矛盾を開きつつ、他者と共にそこにいることが、実在することの意味」。
友人が面白いと勧めてくれたので読んでみたが、なかなか手ごわかった(苦笑)。だが、書いてあることは非常に骨太で、精神医療という切り口から人間の本質に迫っていく記述は、かなり引き込まれた。ちなみに、タイトルの「プシコナウティカ」とは、魂の航海という意味。まさに「人生」という魂の航海を行うにあたり、ひとつの羅針盤を示す考え方だろう。
…とはいえ、興味がなければなかなか読みづらいし、一般的にお薦めできるか?と言われると難しい。