今年69冊目読了。中国の辛亥革命に大きな影響を与え、旧制度・旧道徳の病根を抉り出していった作家による代表作。
表題作は、どちらも有名だが、ぱっと読むだけでは「何のことやら?」という感じに陥る。あくまで、この本は「辛亥革命を目指し、現在(=1900年代初頭)の中国における制度疲労、社会問題を厳しく批判する」という背景・狙いがある、ということを頭に入れておかねばならない。
特に、阿Q正伝の主人公・阿Q(←よくもまぁこんな名前を思いついたものだ)の「負けていても、自分より下のものを見ることによって常に心理的に勝ち続ける」という不毛な自己弁護は、強烈な印象を残す。「今あるものを大事にする」ことと「人との比較で自分より劣るものを見つけて勝ち誇る」ことは全く違うのだが、今の日本も後者(要するに、辛亥革命前夜の中国)と同様な状態に陥っていないだろうか。かくも、人類は進歩しないものか。そう思うと、空恐ろしくなる。
対岸の火事と思わず、自分事として読んでみる。そうすると、とたんに身につまされる感覚が激しく湧き上がってくる。現代だからこそ、必読書ともいえよう。