世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】千葉雅也「勉強の哲学」

今年49冊目読了。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授の著者が、「勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである」という勉強論を述べる一冊。


2年前に図書館で借りて、その内容に衝撃を受けて即購入した本。先日、オンライン読書会で紹介する本を探していたときにピンときてお薦めし、「じゃ、再読してみよう」と読んでみた。前回の衝撃同様、相変わらずの読みごたえ。勉強、読書について改めて考えさせてくれる。


「勉強とは、これまでのやり方でバカなことができる自分を喪失する」という奇抜な定義から入るが、ここからグイグイ引き込まれる。「私たちは、同調圧力によって、できることのはんいを狭められていた。不自由だった。この限界を破って、人生の新しい可能性を開くために、深く勉強する」という主張には激しく同意する。


比喩も含めて、筆者は非常に言語能力が高いが、その筆者が「言語を通して、私たちは、他者に乗っ取られている」と述べたうえで「深く勉強するとは、言語偏重の人になるということ」とする。人類は、言語という最強のツールを用いて自己を高める(深める)、という点からしても、この主張には非常に共感できる。


勉強するための姿勢についても、「自分の状況は、大きな構造的問題のなかにあり、自分一人の問題ではない、というメタ認識をもつことが、勉強を深めるのに必須である」「自分なりに考えて比較するというのは、信頼できる情報の比較を、ある程度のところで、享楽的に中断することである」「比較を続ける中で、仮にベターな結論をだす。ある結論を仮固定しても、比較を続けよ。つまり具体的には、日々、調べ物を続けなければならない」「勉強するにあたって信頼すべき他者は、勉強を続けている他者である」など、とても参考になる。


実際の具体的取り組みについても「普段から、書くことを思考のプロセスに組み込む。アイデアを出すために書く。アイデアができてから書くのではない」「情報過剰の現代においては、有限化が切実な課題。日々、一応はここまでやった、を積み重ねる」と、非常に現実的。


以前に読んだ時と比べて、非常にリアリティをもって読めたように感じる。そして、自分が留意する点もやはり変化してきている。この本そのものの面白さも、再読の意義も味わえた。ぜひ、ご一読をお勧めしたい。