世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】瀬戸賢一「時間の言語学」

今年20冊目読了。言語学者にして大阪市立大学名誉教授の筆者が、時間という概念をメタファーから読み解こうと書き記した一冊。
 
〈お薦め対象〉
時間という概念、そしてメタファーに興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆
 
自分の問いは3つ。
『時間という概念の特徴は?』には「『動く時間』は過去が前で未来が後ろ、『動く自己』は未来が前で過去が後ろ。時間という概念は、明治初期に西洋時計という道具と共に導入された。『とき』は昔からあり、『時間』は計量思考がまとわりつく」。
『時間とメタファーの関係は?』には「現代釈迦は、『時間はお金』というメタファーにコントロールされている。辞書の記述すら、時間についてはメタファーに頼っている。時間のメタファーの中審義は『流れ』」。
『我々は時間をどうとらえたらよいか?』には「時間は命と捉える。時間を直線的にとらえず、自然の概念に基づいたゆったりとした時間の環を回復させる。ときが熟するのをゆっくりと待つ」。
 
正直、途中まではかなり退屈な雰囲気の本だった。言語学というのが、概念を扱っている部分であり、きわめて曖昧なのでわかりにくいなぁ…と思いながら読み進めていた。しかし、終盤になって一気に面白くなった。筆者の提唱するメタファーは、非常に理解できる。「時間が運動と連動してみなされるのは、天体の円環運動が背景にある」「日本語はナル型、英語はスル型」など、なるほど納得の記述も多い。
 
ただ、一般的にお薦めできるか、というと疑問符。ま、筆者ももともと幅広い読者層なんて前提にしていないだろうし、あくまで興味があれば、という程度。