今年6冊目読了。これまた言わずと知れた、シェイクスピアの名作。
四大悲劇を読み通した後だからか、「なんだよ、シェイクスピア先生、ハッピーエンドも描けるんじゃん」というのが正直な感想(←ひでぇ浅さだ)。でも、その中に、しっかり「友と愛、どちらを取るのか?」という大いなる命題を紛れ込ませているあたり、さすが。友情の美しさ、愛の喜びを描いておいてから、両者を天秤にかけるような展開は、まさに「持ち上げて落とす」という落語にも通じる流れ。
そして。題名は「ユダヤの金貸し」のほうがいいんじゃないか?と思うほどキャラの立っているシャイロック。金と憎しみの亡者のように描かれているが、実は、誰の心にも存在する恐れと執着を体現した役割を帯びているように感じる。そう捉えると、裁判も、単なる勧善懲悪でも、機知によるダイナミックな転換でもなく「執着の醜さ、愚かさ」をまざまざと見せつける場面に感じられる。
とはいえ、実は、この話で「筋を通している」のは、主人公アントニオと、他ならぬシャイロックの二人だけなんじゃね?という気がする。後の登場人物は、善人なれども、状況に合わせて主張がブレブレ。でも、むしろそれが人間の生きる性であり、業。そんなことまで感じさせる。やはり、希代の天才なんだなぁ…