世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【日大アメフト部事件:組織論の観点から。】

 これだけ切り口が多く話ができる事象もなかなかない。最後は、組織論の観点から。

《ポイント》
●プレッシャーによる管理は、言論と自由な思考を奪う。
 組織人なら、多かれ少なかれプレッシャーを感じることはある。そして、そのストレスが人を成長させる、という側面もある。
 しかしながら、強度のプレッシャーにさらされると、人間は「どう上の意向に沿うか」という適合を始める。まず言論が取り除かれ、そうなっていくと「上に怒られない」戦略ばかり探すようになり、前提を疑うような自由な思考が奪われる。かくて「絶対指導者と、多数のコマ」という組織が完成する。

●恐怖に憑りつかれると、組織は暴走を始める。
 人間の脳は、生存本能のため、恐怖に非常に弱くできている。そのため、組織が恐怖で人をまとめようとすると、「従わないと、生きていけない」と、組織外のルールより組織内のルールを優先する。
 しかも、今回(実際の発言はどうあれ)監督からの数少ない情報から、加害選手はかなりの「忖度」を行って事件を起こすに至った。「加害選手は、きちんと監督と話をすべきだった」という声がほぼ上がらないのは、「言っただろ! 聞いてないけど すみません」というサラリーマン川柳が示すとおり「生存のために、長いものに巻かれる」ということは、多かれ少なかれ組織にいる人間は体感しているからだろう。

《問題の所在》
●20世紀型の「人間不信、恐怖による統制」はベストパフォーマンスを生まない。
 基本的に、20世紀の官僚システムたる「人間不信、恐怖による統制」は組織操作はしやすいが、ベストパフォーマンスを生まないと考えている。※この点において、日大アメフト部が甲子園ボウルで優勝した、という事実だけは、不適合を起こしているのだが。まぁ、「短期的成果」は出ても長期的成果が出ない、ということにおいては間違いないだろう。
 特に、技術革新、情報爆発の現在社会においては、一人の優秀な指導者と、あとはコマ、というスタイルではすぐに行き詰まる(現代社会は、一人の頭で処理しきれる情報量ではないボリュームを扱わねばならない)。

 自由な言論と思考を担保するために「安心できる場創り」が、21世紀に適合する組織のカギになる、と考えている。

自戒の念を込めて。