世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」

今年12冊目読了。社会心理学者にしてメキシコ大学教授の筆者が、ナチスドイツ政権が席巻する世の中に対して社会心理学の立場から反論を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
真実の自由を生きることを求めるすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆

自分の問いは3つ。
『人間と社会の特性は何か?』には「自由が近代人に与えたのは、独立と合理性、孤独による個人の不安。社会過程の力学の理解には、個人の心理的過程の理解が必要。生命は、成長と表現と生存を求める。」。
『人が自由から逃走するのは何故か?』には「慣習、義務、圧力に従って決断するほうが楽。不安を和らげ、恐怖を避けるために個性と自己の統一性を完全に屈服させる。自我の成長は社会的に妨げられる。」。
『どうすれば、真実の自由を生きられるか?』には「自分自身で考え、感じ、話すことで誇りと幸福を得る。全ての人間との積極的連帯。人間の個性の成長と実現は目的それ自体と知る」。

古典故、読みにくい点はあるものの、第二次大戦を目前にしてこれだけの洞察をしていたことが凄いし、そこから80年ほど経っても人間の課題が似たり寄ったりなことに絶望を覚える。
何にせよ、自由に向き合おうとするときの孤独に流されず、自分自身で考えろ、というのはハンナ・アーレントとも通じるものがある。人生を主体的に生きること。それが、真実の「自由」であることを、改めて自覚させてくれる。さすがの名著。一度は読むべき本である。