世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

クリスティアン・ウォルマー「世界鉄道史」


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【読了】今年31冊目読了。ジャーナリストにして交通・運輸の専門家の筆者が、鉄道の現在に至る歴史を総覧した一冊。

〈お薦め対象〉
鉄道好き、交通に興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆(興味のない人には★☆☆☆☆)
〈実用度(5段階評価)〉
★☆☆☆☆

自分の問いは3つ。
『鉄道の特性は何か?』には「知識層にとって必要な交流を促す手段。過酷な環境で労働力を確保するため、家父長的に社員を遇する。資本集約型で、長期的に利益を上げることが難しい。集団主義で、固定時間に依存」。
『鉄道は人間社会にいかなるインパクトをもたらしたか?』には「国の重要インフラと気づいた政府が関与する。時間を標準化した。大規模観光開発をもたらした。」。
『鉄道はどのように発展・衰退したか?』には「鉄製レールと蒸気機関という単純な発明で発展。ビスマルク政権下で部品が標準化される。特別な盛装車両が建造され、のちに一般大衆客車の改善に繋がる。モーダルシフトに対し、慢性的過小投資と近代化失敗に陥る。電化は初期投資が高くつくが、高速鉄道の成功は電化のおかげ」。

とにかく、凄まじい情報蓄積量だ。多種多様に、よくぞここまで…と感じずにはいられない。

当然、世界のことを書いているのだが、イギリスの専門家からこう見える、という日本の鉄道への記述も興味深い。「人口が大都市集中、都市間が100マイル離れている、都市が海洋平野にある、という日本ほど鉄道に向いている国はない。」「新幹線は高速道路の鉄道版」「高速鉄道は国の象徴であり、その代表が『富士山を背景として走る新幹線』」などとあると、やっぱり嬉しくなる。

分厚い本だが、好きな人には面白く読めるはず。