世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】シェイクスピア「ジュリアス・シーザー」

今年26冊目読了。言わずと知れたシェイクスピアの戯曲で、実在するジュリアス・シーザーの暗殺とその後を描き出した一冊。

本作でも冴えわたるシェイクスピアの細かい心理描写、そしてブルータスの苦悩。それぞれの登場人物が自分なりの正義を述べていくところは、政治描写として面白い。そして、簡単に政治家の演説に右顧左眄する大衆と、それにより国家の行く末が大きく左右される点は、実はシーザーの頃から何も人類は学んでいない、という事実を突きつけられ、絶望的な気持ちになる。

政治家に限らず、リーダーはメンバーの動きを想定し、言葉によって思いを述べ、それによってメンバーを奮い立たせて動かしていくことが求められる。その手練手管、メンバーの反応というフィードバックを巧みに吸い上げながら見事に演説を織りなしていく登場人物を観るにつけ、むしろ当時の政治家(劇なのだが)のほうが現在の政治家や組織のリーダーよりもよほど賢かったのではないか?とすら思う。

そして、「空気」が世論を形成し動かすという恐怖(そこを強調しているわけではないが)。最近、その手の「場を支配する空気」について考える機会が何度かあったので、その観点から読んでみても、非常によく練り込まれている。いろいろな読み方ができる、というのは、さすが名作。史実だけでも十分に面白いが、それが素晴らしい劇に昇華されている。ぜひ、一読をお勧めしたい。

【国宝:志野茶碗】

一月の「雪松屏風図」が、あまりにも圧倒的だったが、実はこっちも凄いんです!!!

16~17世紀、三井記念美術館。垣根に見立てられる文様が絵付けされた、桃山時代の茶碗。美濃大萱の牟田洞窯で焼成されたとされる。卯花墻の銘は、内箱の蓋裏に記された和歌から。
美濃地方で採れる白土に、半透明の長石釉(志野釉)を掛けた志野は、それまで日本になかった白いやきもの。初めて絵付けがされた。
この茶碗は、轆轤で成形したあとに篦で削り、手で力を加えてわざと歪ませている。
茶碗の白い肌と井桁のような文様を卯花が咲く垣根になぞらえ、蓋裏に「山里の 卯花墻の 中つ道 雪踏み分けし 心地こそすれ」、表に「卯花墻」の銘。江戸時代初期の茶人、片桐石州の筆とされる。石州は、大和小泉藩の藩主で、四代将軍家綱の茶道指南役。
卯花墻は、江戸時代は豪商の冬木家に伝わり、明治に大阪の山田家を経て、明治20年頃に室町の三井家に入った。
日本で焼かれた国宝茶碗は、卯花墻と、本阿弥光悦の白楽茶碗 銘 不二山のみ。

釉の厚い部分の白い光沢と、濃淡の緋色が調和する様が、志野の最大の魅力。底の部分にかけて、細かい貫入(釉がかかった部分に入るひび)もある。高台の露胎(釉がかかっていない部分)は三角形。これは、容器に満たした釉に器をくぐらせて施釉するズブ掛けの際、意図的に掛け残したもの。鉄を含んだ絵具に筆を浸して描く鉄絵の技法で、自由に意匠を描いた。これは、長石釉では下絵が流れないことから。

やっぱり、写真の二次元ではわからない、荘厳な佇まい。国宝の持つパワーを感じる。そんな、見事な工芸品。「リアルに見ることが、いかに大事か」。それを、分かり易く感じさせてくれる。

【読了】鬼頭宏「人口から読む日本の歴史」

今年25冊目読了。上智大学経済学部教授の筆者が、歴史人口学を通じて日本の在り方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
日本の人口の今後に不安を抱える人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★☆☆☆

自分の問いは3つ。
『日本の人口はどう変動してきたか?』には「まず、縄文時代に狩猟・漁労・採取で人口が増えた。その後、弥生時代以降は水稲農耕化システムで人口が増えた。さらに、室町時代から江戸前期に経済社会化システムで人口が増えた。最後に、工業化システムへの文明転換で人口規模が増加した。」。
現代社会の人口変動はどう見るべきか?』には「先進国の人口停滞化、途上国の人口爆発は、人口転換のタイムラグを表す。工業文明は、他の文明と異なり、世界拡散が短時間なので各地域が同調した波動となり変化が増幅されている。技術発展の結果、死亡率の改善と出生力抑制の両面で意図的コントロールが可能となっている」。
少子高齢化に向け、日本はどうすべきか?』には「効率的な資源利用による簡素な豊かさの実現。少子化の受け入れと静止人口の実現とともに、超高齢化社会に適合したシステム、ライフスタイルの確立。官民の役割を明確化して、新しい時代に適合的なシステムを模索するため多様な挑戦を試みる」。

2000年の著作ながら、まったく色褪せない主張、というところが、慧眼というべきか、18年にわたる社会の時間浪費(思考停止)とみるべきか。「人口減少に適合した人口再配置、多様な社会構成員の共存を認める寛容性(バリアフリー)※、長寿社会への制度的対応と意識改革、家族の新しい形態模索」という主張は、具体性はないものの、今となんら変わらない。
※今でいう「ダイバーシティ」を、2000年当時に「バリアフリー」と言っているあたりは興味深い。

そのほかにも「人口成長の限界は、技術革新の限界、気候悪化、疫病、社会体制の変質」「現代日本の結婚の変化、少子高齢化、家族形態の変化は、社会病理や社会問題として見るのではなく、工業化による文明システムが形成・成熟したことに随伴する現象」など、抵抗せずに受け入れようという姿勢が20世紀に既にあったことに驚きを禁じ得ない。

途中、江戸時代の人口統計のあたりは「読むのがかったるい」が、「もっと早くやっとけよー!」という感覚を味わうには非常によい。また、後付けであるが「産めよ増やせよ」「一億総活躍」なんて、システム違ってるんだから無理!さっさと受け入れろ!という感覚の主張もすっきりしている。具体策がないのはモヤモヤするが、興味があればご一読を。

【読了】山口謠司「文豪の凄い語彙力」

今年24冊目読了。大東文化大学文学部准教授の筆者が、文豪が実際に使っていた文章から、知性と教養溢れる語彙を、漢字の成り立ちを含めて読み解く一冊。

無知蒙昧であるが故に、不勉強であるとの誹謗に対しても拱手して甘受しなければならない自分。今まで「読了、読了」と臆面もなく標榜し、言葉を玩弄して冊数に拘泥し、知識の醸成を怠っていた事実を突き付けられ、哀怨な気持ちだ。
生中な覚悟で読むと、自分の知識の偏在を突き付けられ、蒼惶と立ち尽くし、荒涼とした気持ちになる。
この本を読んだことを契機に、耄碌することなく、恬然と学び、精励恪勤の紳士となる人生への出立をしたいものだ。

…ふぅ。この文章で19個使った。出てくる語彙は63個。まだまだだし、何より「使うことが目的」では、上記のごとく「ただただわかりにくい」文章になってしまう。なにとぞ、ご海容いただきたい(←これで20個)。

冗談はともかくとして、漢字という「表意文字」はそれそのもので面白い。そのことを思い出させてくれる、非常にわかりやすい説明がまた秀逸。漢字、今一度勉強してみるかな…という気になる。そもそも「パソコン・スマホ病」で、漢字の書き取り力は圧倒的に落ちているし。

昨今「大人の語彙力」に類する本を多数本屋で見かけるが、読んでみると「なんだかなぁ…」という気持ちになる。ちょっとしたビジネスマナー程度の表現で「語彙」というのはいかがなものか。
そもそも、豊富な語彙は「人生の先達が闊達に使いこなすことに憧れ、自らもそれを指向して学ぶ」ところから始まるように思うのだが。入社2年目に、先輩が「我々の主張が正しいということが認められた証左です」とメールに書いているのを拝読し「うわぁ、すげぇ!」と思ったのは今でも思い出す。

そして。表現に難渋し、何度も何度も推敲し、そして適正に自らの思いを表現できる言葉を選び取る。それこそが、語彙力を鍛えることなのだろう。LINEやtwitterを否定するつもりもないが、やはり「文章を練り込む」というのは、場数を踏まないとできない「構え」なんだろうな。

いやぁ、面白い一冊だった。

【読了】サン・テグジュペリ「ちいさな王子」

今年23冊目読了。いまさら説明するまでもない名作「星の王子さま」を、原題にして訳した一冊。

読んでみると、「これ、どこが子供向けなんだよ!?」と思うくらい深みのある中身に驚く。かつ、子供でもまぁまぁ楽しめそうな中身になっているということもすごい。人生における警句を、わかりやすく、かつ端的に伝えているので、さらりと読めるが、立ち止まると実に深い、という魔法のような文章。

また、これに出てくるイラストが実にいい。サン・テグジュペリの多才さを示すようなこのイラストにより、さらに本としての完成度が高まっているのは間違いない。しかし、これはただ才能を活かしただけではなく、磨き込み、鍛え上げたことは容易に想像できる。また、第二次大戦に入っていく中で、非常に厳しい立場に置かれた著者の状況が、さらにそのセンスを逞しく練磨し、この小説が仕上がっている、と感じると、本当に味わい深い。

「おとなってさ!」という物言いに対し、「大人」になっている(精神的にはまだまだ修行が必要なれど、少なくとも身体的には…)身としては、非常に思うところある。痛みを感じつつも、齢を重ねている今だからこそ「瑞々しいこどもの魂を取り戻し、今までの経験と融合させて新しい世界を観る」ために読みたい。そんな一冊だ。

【六週目:身体メンテナンス】

毎週、負荷を強めていく。だんだんアスリート級プログラムに比重を寄せて。

・2/4
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
全く新しいところが筋肉痛に。まだまだ鍛える必要がある。

・2/5
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
筋トレも、開脚も、負荷がかからないと意味がない。うーん。

・2/6
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
開脚、ようやく少しずつ効果が出てきた。やはり、継続しかないということか。

・2/7
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
アスリート級プログラムで、肩と背筋が張ってきた。鍛えるって大事だな。

・2/8
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
開脚、負荷がキツい。やった後に足の筋が痛い…

・2/9
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
腹回りが筋肉痛…このくらい負荷をかけないとな。

・2/10
ストレッチ12項目と、腹を凹ますプログラム2項目、全身引き締めプログラム1項目、ねこ背を治すプログラム1項目、下半身強化プログラム2項目、アスリート級プログラム4項目。加えて開脚ストレッチ。
結構な負荷で、背筋も筋肉痛。やれやれ。

〈今週の結果〉
体重+0.5kg、腹囲変動なし。太った…という感じはないのだが…他方、開脚はまだまだだが、前屈は「指先がつく」状態から「手のひらがつく」状態になったので、成果は出つつある。来週も、負荷をかけていこう。

【読了】サン・テグジュペリ「夜間飛行」

今年22冊目読了。伯爵の位を持つ名門の出ながら、パイロットとして空を飛び続けた筆者が、自らの体験をもとに紡ぎ出した一冊。

自然の美しさと猛威、最前線を飛ぶ飛行士・通信士の思いと後方で全体を考えるリーダーの思い。対照的なコントラストが精緻に描き込まれていて、ぐいぐい惹きつけられるままに、一気にラストまで飛びきった、という感じ。人間の正義とは何か、責任とは何か。そして、自然と技術というものはどうかかわっているのか。そういったことまで考えさせてくれる。かつ、ラストがまた心を揺さぶる。

なんといっても、圧倒的なリアリティ溢れる描写がたまらない。自分があるときは最前線を飛び、あるときは後方事務所にいる、というような「どっぷり浸る世界観」は、本当に素晴らしい。知性と感性を双方磨き、かつそれが飛行士という実体験をクロスオーバーさせているのだから、誰がやってもかなわない次元の小説に昇華している。

もちろん、現代においてはリーダーの価値観というのは当時(戦前)とだいぶ変わっているし、本書に出てくるリーダー像が絶対とは思わない。しかし、情と責任の相克を乗り越えてこそリーダーである、という点は今も変わらないのではなかろうか。最前線の飛行士たちは重力から自由になって飛び立っていくが、リーダーは重力よりもはるかに思い責任を担いながら飛び立たねばならない。そんな事も学ばせてくれる。小説としても素晴らしいし、人情劇としても秀逸だが、実はリーダーシップについて考えさせられる一冊だ、と思う。