世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【国宝】浄土寺本堂

1327年建立。本堂は1325年の火災後、再建したもの。前面二間通りを外陣とし、後ろを内陣とする密教式の設計で、和様を基調とするが、桟唐戸、花肘木、二斗などを用いた唐様(禅宗様)との折衷様式。
須弥壇は創建当初のものであり、壇上の春日厨子には本尊十一面観音を納めている。


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もともとは、616年、聖徳太子の開基と伝え在られる。鎌倉末期には荒廃しきっていたが、奈良西大寺の定証上人が西国教化の道すがら里人の懇請を容れて寺の再興を発願。1303年に再興した。もともと備南の良港であった尾道は交通・経済・軍事の要地であり、足利尊氏浄土寺で1万巻の観音経を読誦して戦勝を祈願するなど、足利氏との縁は深かった。その後、戦国時代となって武士との関係は薄れ、地元豪商の庇護を受けるようになり、支配階級寺院から民衆信仰の寺院へと移行した。


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参道が、のちに山陽本線が通った関係で線路をくぐる形になっている、とか、境内にはたくさんの鳩がいて、割合にのんびりした風情が漂っている、など、なかなか見ていて面白い。

本堂は、朱塗りが目にも鮮やかで、今なお華やいだ雰囲気を醸し出している。聖徳太子開基という歴史は感じるすべもないが、それでも地元に根付いた寺院として、長く地域と共に歩んできたであろうことは感じ取ることができる。地元の信仰と人々の心の拠り所。それをひっくるめて、価値ある寺院だと感じた。