世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】養老孟司「バカの壁」

今年91冊目読了。東京大学名誉教授にして解剖学者の筆者が、人間の脳が陥りやすい罠と、それへの対処の仕方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
すべての人
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『人間が陥りやすい罠は?』には「自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまっている。現実はそう簡単にわかるものではない、と真剣に考えず、正さを安易に信じる。一元論のほうが楽で、思考停止状況が一番気持ちいいから、原理主義が育つ」。
『人間社会の原則は何か?』には「人間の脳は、できるだけ多くの人に共通了解を広げることで進歩を続けてきた。健康な状態というのは、プログラムの編成替えをして常に様々な入出力をしていること。意識にとっては共有化されるものが大事だが、個性を保証していくものは身体であり、意識に対しての無意識」。
『生きていくうえで留意すべきことは?』には「普遍なのは情報であり、人間は流転する。学んだことと行動が互いに影響しあわなくてはいけない。自分には無意識の部分もあるのだから、という姿勢で意識に留保をつける」。

この本が大ブームを巻き起こした時には、まだ年間10冊程度しか本を読まず、しかも知的好奇心が薄かった故に手に取ることがなかった。出版から14年経って初読したが、これは面白すぎる。「組織が求める個性を発揮せよ、というのは矛盾した要求」「都市に住むと、意識の世界に完全に浸りきってしまうことで無意識を忘れてしまう」「自分が面白いと思う事しか教えられない」「すべてのものの背景には欲望があり、それをほどほどにすべき」「脳は、役に立たなくても入出力をくりかえしてグルグル回さないと退化する」など、「ああ、なるほど!!」と思わされる記述多数。

タイトルにもなっている「バカは、壁の内側だけが世界で、向こう側が存在することすらわかっていない」という状況に、自分も陥っているわけで…深く自省したい。とにかく、これは一読をお勧めしたい。