世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ジェイムズ「ねじの回転」

今年48冊目読了。ニューヨーク生まれでイギリスで活躍した「小説の技法を極めた」と評される筆者が書き表した戦慄の物語。

間接間接話法とでも言うべき独特の表現で展開される物語は、初めの穏やかさにもところどころ異常さが散りばめられており、読み始めたら止められない。新任家庭教師が、健やかな兄と妹の存在に癒されながら、彼らに迫る陰と戦う決意を固めて物語は進むのだが、徐々に絡めとられていく心境、そして人間の表と裏。最後は、非常にシビアな結末を迎える。

まずもって、どうやってこんな小説の着想を得たのかが信じられないし、それを描き切る筆致力が半端ない。風景や情景の美しさを細密に表現しながら、必ず何らかの黒い影を織り交ぜているので、読んでいて心地よく落ち着く暇がない。まさに、「ねじが回転する」がごとく、ギリギリと心が締め付けられていく思い。

情景の描写で、人間の恐怖が描き切れる。その事実に気づいて、それを実践したところが凄い。そして、この秀逸なタイトルをつけたことも、また筆者のセンスを感じさせる。いやはや。