今年48冊目読了。ニューヨーク生まれでイギリスで活躍した「小説の技法を極めた」と評される筆者が書き表した戦慄の物語。
間接間接話法とでも言うべき独特の表現で展開される物語は、初めの穏やかさにもところどころ異常さが散りばめられており、読み始めたら止められない。新任家庭教師が、健やかな兄と妹の存在に癒されながら、彼らに迫る陰と戦う決意を固めて物語は進むのだが、徐々に絡めとられていく心境、そして人間の表と裏。最後は、非常にシビアな結末を迎える。
まずもって、どうやってこんな小説の着想を得たのかが信じられないし、それを描き切る筆致力が半端ない。風景や情景の美しさを細密に表現しながら、必ず何らかの黒い影を織り交ぜているので、読んでいて心地よく落ち着く暇がない。まさに、「ねじが回転する」がごとく、ギリギリと心が締め付けられていく思い。
情景の描写で、人間の恐怖が描き切れる。その事実に気づいて、それを実践したところが凄い。そして、この秀逸なタイトルをつけたことも、また筆者のセンスを感じさせる。いやはや。