世界遺産マイスターKの「地球に感謝!」

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【読了】木下光生「貧困と自己責任の近世日本史」

今年36冊目読了。奈良大学文学部准教授の筆者が、現代日本の社会保障の薄さの歴史的経緯を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
社会保障に関心のある全ての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆

自分の問いは3つ。
『近代日本の貧困の実態はどのようなものか?』には「米作り以外にも、諸作物による販売収入や自家消費を行っていた。貧困を招いていたのは、農民自身の旺盛な消費欲。貧困の決定的元凶にあえて触れず、二番手の年貢と借金の問題として、領主に詰め寄った」。
『近代日本の貧困救済破どうであったか?』には「個に対する救済は、制限主義と社会的制裁。生活保障は基本的に民間任せで、公的支援は臨時的・限定的。自村から破産者や出奔人を出すのは村の恥」。
『現代の日本の貧困救済の実態は?』には「息をひそんで生きる程度の生活水準を保障するものでしかない。貧困の公的救済に対して異様に冷たく、貧困をもたらす原因として自己責任を極度に重視する。恒常的で、十分な生活保障をよしとする歴史的訓練を全く積み重ねていなかった」。

正直、学術的には大事だが、読み進めるにはさして…という統計データが重視されるので、結構疲れる。それを割り引いても、示唆に富む考察には感服する。「普段、納税の見返りを実感できず、他者も信頼できない人々が、税金で見ず知らずの人を救うことに肯定的にはなれない」は、まさに現代の貧困と社会保障の問題をえぐり出している。

目を向けたくないが、直視しないといけないテーマ。データ分析の細々とした部分は置いておいて、一読する価値はある。